生命線は"J2最強"の攻撃力!大分はブレないスタイルで昇格へひた走る

2018年11月07日 柚野真也

残り2試合で注目したいのは前線の選手起用だ

40試合で73得点を叩き出す攻撃陣が最大の特長。馬場をはじめ、ふた桁得点者が4人もいる。(C)SOCCER DIGEST

「勝点70、プレーオフ進出の6位内」。大分トリニータが開幕前に掲げた目標だ。40節の横浜FCとの上位対決に敗れ2位に後退したが、残り2試合を残しこの目標はひとまず達成した。とはいえ、「我々はなにも成し遂げていない。目の前の試合に集中して戦うだけ」と繰り返し語ってきた片野坂知宏監督は、残り試合もこれまでと同じように一戦必勝で戦う覚悟だ。
 
 横浜FCとの大事な試合に敗れはしたが、チームの状態は悪くはない。馬場賢治が「今の順位にいるのはチームとしてこれまで積み上げてきた結果。自分たちがやってきたことは間違いではない」と話すように、チームの戦い方にブレはない。
 GKを含めた後方からの丹念なボール回しで攻撃を組み立て、相手のほころびを突く。フォーメーションは3ー4ー2ー1を基本とし、守備時には5バックに変貌。攻撃時は2シャドーのひとりがボールを受けに下がり、パスが通ったと同時に攻撃のスイッチが入り、前線の3人のコンビネーションやサイドを経由して好機を作る。
 2巡目以降はシャドーの動きを警戒され、中央を絞ってパスを寸断するチームが多くなったことから、最終ラインから直接サイドの裏のスペースを狙う形で攻撃を形成することも多くなったが、ダイレクトパスを駆使してゴールを狙うスタイルに変わりはない。 対戦相手に応じてプレスのかけ方や、ポジション取り、ボールを奪った後の動きなどを、柔軟に形を変える戦い方こそ、片野坂サッカーの真骨頂と言えるだろう。
 たとえ前の試合で得点を奪おうが活躍しようが、練習で好調の選手を見極め、対戦相手によってメンバーを変更する。特に前線の3選手の入れ替えは激しい。今季ふた桁得点を挙げた選手は、馬場、藤本憲明、三平和司、後藤優介と4人いるが、出場数が多いのは32試合で4得点の伊佐耕平であるように、必ずしも得点だけが評価されているわけではない。求められるのは味方のためにスペースを作る献身的なプレーである。
 
 残り2試合、もしくはプレーオフを見据えると、鍵となるのがゲームプランだ。横浜FC戦では先制しながら3失点して逆転された。「もう1点取りにいくのか、もう少しボールを回しながら相手を疲弊させてミスを誘うのかという方向性が曖昧だった」と馬場。ゲームプランに沿って意思統一をして試合をコントロールするのか。基本スタンスは確実に勝点3を奪うこと。リーグ最多得点を誇る攻撃を生かさない手はない。どのような時間帯に、どのようにして得点を狙うのか。刻々と状況が変化するなかで、選手たちが同じ意識を持って戦えるかがポイントになる。
 
 具体的に注目したいのが前線の選手起用だ。途中交代を含め、前線の最適な組み合わせを見つけ、大げさに言えば、1−0よりも失点してもいいから3−1や4−2で勝つぐらいの意識が必要。コンディション不良で横浜FC戦に帯同しなかった藤本や調子が上がってきた後藤のリアルストライカーを切り札として使いたいところだ。
 
取材・文●柚野真也(スポーツライター)
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