終了のホイッスルが鳴っても戦いは続く? 白熱のクラシコはファンやメディアを巻き込んだ“場外戦”へ

2018年10月29日 山本美智子

バルサ寄りのメディアは7時間に渡り「マドリーの危機」を特集。

クラシコの勝利を祝うバルサ・サポーター。彼らの“祭り”はもうしばらく続きそうな勢いだ。(C)Rafa HUERTA

 カンプ・ノウで開催された今シーズン最初のクラシコは、バルセロナの圧勝に終わった。スコアは5-1。いわゆる"マニータ"(手のひらの意。ここでは数字の5を示す)での勝利は、2010年11月以来、約8年ぶりだ。

 試合中、そして試合後も、バルサのサポーターは、「ロペテギよ、一生マドリーに残ってくれ!」「ロペテギを代表監督に!」といった内容のチャントを歌っていたが、今回の惨敗によって、監督の解任が秒読み段階となっているライバルクラブをネタに楽しんでいるのは、サポーターだけじゃない。地元メディアも、同様だ。

 終了の10分後には、有名なサッカー番組で司会を務めるマドリー寄りの記者が、コンテの写真をみずからのtwitterに掲載し、「到着はいつ?」と投稿。すると、「この心ない投稿がロペテギの心をズタズタに切り裂いた」と報じたバルサ寄りの『SPORT』紙は、「マドリーのクライシス最新ニュース」と題して、クラシコ終了後から約7時間に渡り、電子版で危機的状況にあるライバルを特集しつづけた。

 そのなかには、ロペテギがガックリとうなだれながらバスに乗り込む様子を、写真付きで報じたものもあり、そこには「明日解任されるとわかっているのに、午前11時に練習を率いなければならない気の毒なロペテギ!」とのコメントも。その隣には、噂される後任監督の情報が掲載されていた。

 また特集の最後には、「ちなみにクリスチアーノ・ロナウドは土曜日に2ゴールを決め、ユベントスに勝利をもたらした」とも丁寧に加えている。
 
 バルセロナの空港では、バルサのサポーターからマドリー期待の若きストライカー、ヴィニシウス・ジュニオールに対して、「ヴィニシウス、グッジョブ!」との声が飛んだ。

 マドリーが今夏、4500万ユーロ(約58億5000万円)の大枚を叩いて獲得した18歳のブラジル人FWは、結局トップチームには登録されず、現在はマドリーBを主戦場としている。

 そのマドリーBの試合で前節に退場していたヴィニシウスは、その後処分が軽減され、クラシコへの出場許可が下りたためにバルセロナまで同行したが、最終的に招集外となってスタンド観戦を強いられていた。その事実を知るバルセロニスタが、からかって声をかけたというわけだ。

 ある意味、残酷にも聞こえるかもしれないが、クラシコでは勝者がその後の1週間を徹底的に楽しむのがお約束。試合終了の笛が鳴り響いた後も、戦いは続いているのだ。

文●山本美智子(フリーランス)
 

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