曺貴裁監督が川崎戦で下した決断――。なぜ、20歳・杉岡大暉にキャプテンマークを託したのか

2018年09月28日 サッカーダイジェストWeb編集部

「仕掛けていく気持ちが足りなくなっていた」(曺貴裁監督)

川崎戦でアグレッシブにプレーした杉岡。サイドを抉り、クロスを上げ切る場面も見られた。写真:金子拓也(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ18節]湘南0-0川崎/9月26日/BMWス

 9月26日、湘南は台風で延期されていた18節を戦い、川崎と0-0で引き分けた。相手に押し込まれる時間帯が長かった事実を踏まえれば、残留争いに向けて大きな勝点1を積み上げたと言えるだろう。

 そうした試合で20歳の若武者が初めてキャプテンマークを託された。U-21日本代表の杉岡大暉だ。キャプテンの高山薫がベンチだった川崎戦は、副キャプテンである梅崎司や大野和成らが先発していたが、なぜ29番に大役が回ってきたのだろうか。

 杉岡は今季から設けられた「ヤングキャプテン」を任されている。若手選手の意見集約、チームへの伝達などが主な役割となっており、公式戦でキャプテンマークを巻く機会があっても不思議ではないだろう。
 
 ただ、役職だけが理由ではない。杉岡に良さを取り戻させるための任命だった。今回、杉岡にキャプテンを任せる決断を下した曺貴裁監督は、その意図をこう説明する。
 
「U-21日本代表のアジア大会から帰ってきて、すごく疲労していた。なので、その後の試合は途中から出したりしていたのですが、若いのに気持ち的にチャレンジするとか、仕掛けていく気持ちが足りなくなっていた。彼はヤングキャプテンだし、これまで託す場面がなかったのでいい機会だなと思って任せました」
 
 杉岡の特長は堅実な守備と物怖じせずに攻め上がっていく姿勢。市立船橋高から加わったルーキーイヤーの昨季にポジションを掴んだのも、若者らしく積極的にチャレンジする姿勢があったからだ。だが、U-21日本代表の一員として参加したアジア大会から戻ってきて以降、杉岡は疲労もあって思い切りの良さが影を潜めた。そこで指揮官は杉岡にキャプテンマークを託し、積極的なプレーを促したのだ。
 
 その想いは杉岡にも伝わっており、しっかりとプレーで応えてみせた。「曺さんから最近、思い切りがないと言われていて、あえて(キャプテンを)任せて、僕のプレーをみんなに見せる空気を作ってくれた。少し緊張もしましたけど、やるだけだったのでいい形でプレーができた」と川崎戦の出来に納得の表情を見せ、曺監督も「エウシーニョとか家長というトップクラスの攻撃陣に対して、怯まずやったと思う」と杉岡に一定の評価を与えた。
 
 キャプテンマークを託され、復調の兆しを見せた杉岡。東京五輪世代の成長株は川崎戦で得た感覚を残りのシーズンに生かしていく。
 
取材・文●松尾祐希(サッカーダイジェストWeb編集部)
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