【神戸】英雄の座を捨てサラリー減も厭わない。試練を求めるタイ代表DFをチームメイトはどう見ている?

2018年09月26日 佐々木裕介

同じく今季加入の那須が語るティーラトンの素顔は?

今季神戸に加入したティーラトン。サッカーへの真摯な姿勢にチームメイトも一目置いている。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 J1リーグ27節・浦和戦後、ミックスゾーンへ現われた神戸DF、ティーラトン・ブンマタンの表情は冴えなかった。
 
 この日の神戸は、前節の怪我の影響からMFアンドレス・イニエスタを欠き攻撃の起点を作れず、良いところなく0-4の敗戦。しかしその結果以上に、3-5-2システムの中盤左サイドのポジションには不慣れな三田啓貴が先発し、自らは終始ベンチだったことに納得がいかなかったのかも知れない。
 
 タイ代表ではキャプテンを任されることも多いティーラトン。"決意の"移籍から約半年が経過した現在、日本で生活する普段の彼はどうなのか。同じく今季神戸に加入したベテランDF、那須大亮から"ティーラトンの素顔"について話を聞かせてもらった。
 
 
――チームメイトから見るティーラトン選手はどのように映っているのか、聞かせていただけますか?
 
「もの凄く気さくですよ。いまでは覚えた日本語で冗談言ったりしていますし。加入当初からチームに溶け込もうとする姿勢には目を見張るものがありました」
 
―――サッカー選手としての彼について、もう少し詳しく聞かせてください。
 
「タイでは代表選手で英雄だと聞いています。正直自国でプレーしていても困ることはなかっただろう中で、サラリーだったり待遇面を落としてまで"新たなものを学び成長したい"一心で日本へ来たことを本人から聞いた時には、その意欲に感銘を受けました。サッカーと真摯に向き合っている姿に、逆に彼から学ぶものが大きいなと」
 
―――なるほど。では仲の良いチームメイトはどのあたりなのでしょうか?
 
「北本久仁衛(DF/4番)や大槻周平(FW/33番)ですかね。大槻とは練習中にじゃれ合ったり、冗談を言い合ったりする姿をよく見かけますよ」
 
―――那須選手はプライベートで食事に行ったりすることはあるんでしょうか?
 
「一度行きましたね。タイ料理が良いっていうんで、彼の行きつけのお店に連れて行ってもらいましたよ。他のものも食べろって言ってるんですけどね(笑)」
 
 A代表経験こそないが、世代別代表で世界を感じ、またJ1・6クラブを渡り歩いたベテランからしても、彼の姿勢は評価されるべきものなのだろう。
 
 10月に控えた国際Aマッチウィーク。タイ代表は、アウェーで香港代表(11日)と、またホームでトリニダード・トバゴ代表(14日)との親善試合を控えている。おそらくティーラトンも招集されることだろう。
 
 大物選手加入や新監督就任等、目まぐるしく変化し、注目を集めている所属チーム事情のなかで、焦りや悶々とする想いがあるのは事実だろう。しかしそれは、確立された地位のあるタイでは経験することの難しい類の試練でもある。云わば、彼はその試練を求めて、今の環境に身を投じて成長するために、海を渡ってきたのだ。
 
 残りのシーズンを気持ち良く戦い抜くためにも、代表チーム合流で良い意味でのリフレッシュを土産に、神戸に戻ってきてほしいと願っている。
 
取材・文:佐々木裕介

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