「まさか日本で…」槙野智章がケルン元同僚ポドルスキとのJ初対戦に抱いた想い

2018年09月24日 轡田哲朗

ようやく実現した初対決。「対戦しないのにプライベートでは会ったりする不思議な関係で」

戦いの舞台をドイツからJに変えて、そして敵味方となって同じピッチに立った槙野とポドルスキ。5度目の対戦で両者がついに相まみえた。写真:徳原隆元

[J1リーグ27節]浦和4-0神戸/9月23日/埼玉
 
 浦和レッズの槙野智章とヴィッセル神戸のルーカス・ポドルスキは、23日のJ1リーグ27節のゲームでようやくJリーグでの初対戦が実現した。2011年にブンデスリーガのケルンで共にプレーした間柄で、ポドルスキは昨年から神戸でプレーしているが、これまで5試合も対戦がありながら両者どちらかの負傷欠場や槙野の日本代表選出とゲームが重なり、直接対決が実現してこなかった。
 
 槙野は試合前に「ピッチ上では対戦していないのに、連絡を取ったりプライベートで会ったりする不思議な関係で」と話していた。しかし、神戸はアンドレス・イニエスタが負傷のため浦和戦への出場を見送り、ポドルスキは槙野の対面になる右ウイングではなく、インサイドハーフでプレーしていた。そのため、「順調なら、同じサイドでマッチアップできる」という丁々発止のやり合いは実現せず、ボールを奪い合うような本当の"マッチアップ"は試合終盤での1回だけだった。
 
 それでも槙野は「彼からのパスを出所として警戒していた」と話し、「彼にとって30メートルはシュートレンジ。サイドチェンジも振れる選手なので、青木(拓矢)選手と長澤(和輝)選手には、絶対に時間とスペースを与えないでくれと、口酸っぱく要求していました」と、やはり警戒すべき選手として認識していた。
 
 槙野にとって11年のケルン移籍は、初の海外移籍というだけでなく、サンフレッチェ広島以外のチームでプレーするのも初めての経験だった。その時にポドルスキが、チームの輪の中に入れるようにしてくれたのだと、槙野は感謝の気持ちを今でも持っている。サッカー界では、元同僚との対戦や古巣対決といったものはまったく珍しくない。それでも、ドイツと日本という遠く距離が離れ、サッカー界において世界的な位置づけが全く違う場所で元同僚と対戦した一日を槙野はこう振り返っている。
 
「まさか一緒にプレーしていた時に、何年か経って日本で対決するなんて思いもしませんでした。彼のように名前も実力も経験もある選手がJリーグに来てくれることで、サポーターだけでなく、神戸の選手たちからもいろいろなものを引き出してくれたと思うんですね。それはやっぱり、日本人選手からは感じ取れないものだと思います。イニエスタ選手も来たことで、神戸の選手からも自分たちがもっとうまくなっていると聞きました。レベルの高い選手とプレーすることで、プレーの幅や成長が変わるのを僕も実感してきましたし、Jリーグ全体が、彼らから学ぶものがたくさんあると思います」
 
 この日の試合は浦和が4-0で完勝し、ポドルスキは自慢の左足を振り抜く瞬間がなかった。それでも、自身がドイツに挑戦した時にクラブのエースとして君臨していた存在と同じピッチで相対する時間が実現したことは、槙野にとって思い出深い瞬間になったはずだ。
 
取材・文●轡田哲朗(フリーライター)
 
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