韓国との過酷な我慢比べに勝ったなでしこジャパン。海外組不在も競争力向上で再びアジア女王の座を掴めるか

2018年08月29日 西森彰

日程面でも不利だった日本。終盤に粘り強さを発揮

北朝鮮戦でエースたるゆえんを証明した岩渕。韓国戦でも前線で攻撃の起点となった。(C) Getty Images

 インドネシアのパレンバンで開催中のアジア大会・女子サッカー競技。8月28日の準決勝で韓国を2対1と振り切った日本は、中国との決勝戦に臨むことになった。
 
 この試合が行なわれる前の時点で、通算成績では日本側から見て12勝3敗7分けと優勢。だが、その数字以上に、韓国戦では痛い思いをずいぶんしている。
 
 2013年の東アジアカップ最終戦では、チ・ソヨン(チェルシー)の2ゴールで1-2と敗戦を喫し、大会3連覇が霧散した。また、2016年のリオ五輪アジア予選では終了直前に同点弾を浴び、アジア予選敗退に至る流れが出来上がってしまった。最終的には優勝した今春のアジアカップでも、韓国とはスコアレスドロー。一時、グループリーグ敗退寸前の状況に追い込まれている。
 
 今回は、その時よりも条件が悪かった。チェルシーのチ・ソヨン、INAC神戸レオネッサのイ・ミナなど、海外組も招集した韓国に対して、日本はチームキャプテンの熊谷紗希(リヨン)などを欠く純国内組での構成。スケジュールも、香港を5-0で完封して中3日の韓国に対して、北朝鮮との死闘後、中2日の日本。不利は歴然だった。
 
 春の対戦時から先発メンバーの半数が変わっている日本は、試合開始直後からイニシアティブを掴んだ。菅澤優衣香(浦和レッズレディース)が韓国最終ラインの裏を狙う動きを見せ、ボランチ起用の有吉佐織(日テレ・ベレーザ)からのパスを先制点に結びつける。その後もボール保持率を高めながら、なかなか主導権を譲らない。
 
 後半はコンディション面で上回る韓国の逆襲に晒され、なでしこリーグでプレーするイ・ミナに同点ゴールを奪われた。試合開始直前にスコールが襲ったピッチは湿度も高く、ぬかるんだ足下から選手のエネルギーを奪っていく。それでも日本の選手は雑なクリアを極力控えて、ボールをつなぎながら、相手のペースダウンを待った。
 
 そして、韓国の選手がピッチのそこここで足をつるようになると、日本はパススピードを緩から急に上げてペースチェンジ。最後は、清水梨紗(日テレ・ベレーザ)のクロスに菅澤が頭で合わせて、勝ち越しゴールを演出(最終的には韓国DFのオウンゴール)。終了間際に訪れた韓国の連続セットプレーも、集中して凌ぎ切った。
 

次ページ海外組は不在も「誰かがいないだけで勝てないチームにしたくない」と指揮官

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事