柿谷曜一朗、涙の国内ラストゲーム。セレッソへの溢れる思いを抑え切れず……

2014年07月16日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「8番がもっともっと似合う選手になって帰ってくる」

退団セレモニーでサポーターへ向けて挨拶する柿谷。途中、涙で声を詰まらせる場面も。(C) SOCCER DIGEST

 ワールドカップが終了し、Jリーグが再開された7月15日。ACL参戦組の4チームのみで行なわれた2試合のうちのひとつ、「C大阪対川崎」は、スイス1部リーグ・バーゼルに移籍する柿谷曜一朗の国内ラストゲームとなった。

【写真で振り返る】柿谷曜一朗 2006-2014の歩み
 
 メンバー表には「FW8 柿谷曜一朗」の文字がしっかりと刻まれていた。当初マルコ・ペッツァイオリ新監督は欠場を示唆していたが、前日練習後には「楽しみにしてください」とコメント。柿谷自身もチームメイトともにフルメニューをこなし、他の選手とともにクラブバスに乗り込んだ。
 
 前日夕方の時点で、すでに300人以上のファンがスタジアムの前に入場用の列を作っていたほどで、試合当日はチームユニホームを着たサポーターによってスタンドがピンク色に染まるなど、柿谷の門出を祝う体制は整っていた。
 
 ベンチスタートとなった柿谷は、"12人目"のメンバーとして集合写真撮影、円陣に参加。旅立ちを祝うべく、チームメイトたちは序盤からアクセル全開で挑んだ。果敢にプレスを仕掛け、19分に安藤のゴールで先制するなど主導権を握って前半を折り返したが、運動量の落ちた後半に逆転を許してしまう。78分には大島の接触プレーに報復した南野が一発退場。1-2と1点ビハインドのうえ、10人となった苦しい状況で最後のピッチに立つことになった。
 
「柿谷はこれまでこのチームに多大な貢献をしてきた選手であり、ファン、サポーターの方々にいい形でお別れができるようにチャンスをあげたかったのですが、我々にはオフェンスの力が必要だったので、ふたりのオフェンシブな選手(柿谷、永井)を入れました」(ペッツァイオリ監督)
 
"想定外"のシチュエーションのなか、「負けてたんで、なにも考えていませんでした」という柿谷はアディショナルタイム4分を含めた11分間、ドリブル突破、ポストプレー、CKのキッカー、そして守備とチームのために最後まで全力でプレーした。しかし、数的劣勢の影響もあり、決定的な場面は作れないまま。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、天を仰いだ。
 
 ラストゲームを勝利で飾れず、直後の壮行セレモニーのスピーチに臨んだ柿谷は、涙ながらに駆け付けたサポーターにメッセージを送った。
「こんばんは。スイスのバーゼルというチームに移籍することが決まりました。正直すごく悩みました。自分からこの8番のユニホームを脱ぐのは、どうしてもしたくないことで……。ただ、ワールドカップを経験してもっともっと強くならないといけないと思いました」
 
「セレッソに帰って来てから、たくさんのサポーターから本当に温かく見守ってもらいました。なによりチームメイトのみんなには、本当に苦しい時に助けてもらいました。本当にありがとうございます。そして、家族。こんな僕をここまで育ててくれて、本当にありがとうございます」
 
「最後に、サポーターの皆さんには『優勝してから出て行く』とあれほど言っていたのに、自分から出て行くことを選んでしまって、本当に申し訳なく思います。ただ、今よりもっともっと強くなって、ここの8番がもっともっと似合う選手になって帰って来たいと思います。本当に今日はありがとうございました」

【写真】柿谷曜一朗、C大阪退団セレモニー

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