J1後半戦へのビジョン|広島編|3連覇への鍵は前線のコンビネーションの復活

2014年07月08日 中野和也

チーム練習ができず、コンビネーションが錆び付く。

7節以降、攻撃が徐々に停滞していった広島。コンビネーションの改善が3連覇への鍵になる。(C) SOCCER DIGEST

 前半戦の広島は攻撃に活力がなく、停滞感が著しかった。中央を崩すシーンは皆無に等しく、クロスがピシャリと合ってのゴールも数えるほど。森保一監督が就任して以降、1試合の平均得点は、1年目の1.85、2年目の1.50と来て、3年目の今シーズンは1.23(13試合消化)と最も少ない。1試合の平均シュート数も1位鹿島の15.0本に対して、5本近くも少ない13位の10.5本。決定機数の1試合平均3.4回(総数44回)は、1位浦和の4.6回(総数65回)に大きく差をつけられている。
 
 その最大の要因は、コンビネーションの「錆び付き」だ。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)参戦による過密日程で、ほぼ2か月にわたってチーム練習ができなかったために起きた問題である。6節の名古屋戦では大量5得点を奪ったものの、それ以降の7試合で無得点試合が4つもあった。コンビネーションで得点を奪ったのは、10節・鳥栖戦での石原のゴールくらいだ。
 
 広島の特長である前線3人のワンタッチコンビネーションとミキッチの突破は、他チームに研究し尽くされている。フリックやスルーは読まれ、ミキッチのクロスはパスコースを切った上、中ではじき返す。ならばと、青山敏弘が裏のスペースを狙っても、低い位置でブロックを作る敵の裏にスペースはない。
 
 一方で前半戦に効果的だったのが、ストッパーの塩谷司などが頻繁に見せた後方からのオーバーラップだった。「得点は誰が取ってもいい」(森保監督)わけで、ボランチやウイングバックなど後ろの選手が得点を奪うような形がさらに多く生まれれば、相手の広島対策を無力化できる。しかし、そういうプレーを引き出すためにも、前線でのコンビネーションの切れ味を復活させ、敵を十分に引き付けなければならない。それなくしてワイドのスペースは広がらず、3列目からの攻撃参加の効果も薄くなってしまう。
 
 その現実を踏まえ、森保監督は室蘭キャンプ(6月19~29日)のテーマを「コンビプレーを活かした攻撃」と掲げた。クロスからのシュート、クサビからの展開、ワンタッチ・ツータッチにこだわったパス回しからの崩し。ハーフコートに24人が入り、常にプレスがかかった状態でのポゼッション。コンビプレーの輝きを取り戻すためにメンバーもある程度固定し、練習という名のヤスリで磨きに磨いた。
「縦パスから3人目、4人目と絡んでいく形は出てきたと思う」と森保監督は手応えを口にする。実際、キャンプ最終日の札幌との練習試合では、4得点中3点が美しいコンビネーションから。ミキッチのドリブルに対して石原直樹、佐藤寿人の連続スルーから丸谷拓也が飛び込んで決めた2点目。中央のパス回しで相手を中に固めておいて放った髙萩洋次郎のスルーパスに、左ワイドの宮原和也が飛び込んでゴールを決めた4点目も、実に広島らしかった。
 
 さらに「3人目の動き」を得意とする森﨑浩司が復活し、ルーキーの皆川佑介がキャンプ中の練習試合で3試合・9得点の大爆発。豊富なアイデアを武器に台頭してきた2年目の川辺駿。同じく2年目で「1.5列目のストライカー」というべき野津田岳人の存在も含め、ベテランの復調や若手の充実も後半戦への期待を高める。
 
 リーグ序盤戦の13試合で、3人合わせて7得点にとどまった佐藤寿人、石原直樹、髙萩のトリオ復権は、いかにコンビネーションを高められるかに懸かっている。ワールドカップでは「個の力」が目立っているが、広島は「ユニットの力」で勝負だ。3連覇への鍵は、そこにある。
 
取材・文:中野和也(フリーライター)
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