この大会に懸ける意気込みを、誰もが知りすぎるほど知っていた。
クリアボールを収めたその瞬間、スニガが背後から飛びかかる。ネイマールのワールドカップは、突然、終わってしまった。 (C) Getty Images
ブラジルは生き残った。しかし、ネイマールはワールドカップから去った――。これがコロンビアとの準々決勝で手にした結果だった。
コロンビアのファン・カミーロ・スニガの激しすぎるチャージを受けたのは、あと5分ほどで規定の90分が経過しようというタイミングだった。チャージというより、それは膝蹴りと表現したほうが適当だろう。
背中に一撃を食らったネイマールはその場に倒れ、苦痛に顔をゆがめたまま、動けない。担架でピッチを後にすると、もう戻ってこなかった。そう、もうこのまま、ワールドカップのピッチには戻ってこない。ネイマールのブラジル・ワールドカップは、終わってしまったのだ。
ネイマールが執拗にマークされ、激しいタックルに倒されるのは当たり前の光景になっていた。だが、この時はそれまでとは違っていた。激痛に手足をばたつかせたのも束の間、うつ伏せのまま動かなくなったネイマールに、誰もがただならぬ事態を予感する。そしてその予感は、的中する。脊椎の骨折、それが激痛の原因だった。
2-1で試合には勝った。だが、チームには暗雲が立ち込めた。全治約1か月と診断されたネイマールは、大会中の復帰が絶望となった。その事実を知ったチームメイトは、全員が悔しい思いでいっぱいになった。この大会に懸けるネイマールの意気込みを、全員が知っていたからだ。身体に気を配り、コンディションを整え、それこそ全身全霊をこのワールドカップに捧げ、自分のためではなくチームのために戦うネイマールの姿を、チームメイトは知りすぎるほど知っていた。
だからこそ、全員が固く心に誓った。ネイマールのために戦おう、と。
コロンビアのファン・カミーロ・スニガの激しすぎるチャージを受けたのは、あと5分ほどで規定の90分が経過しようというタイミングだった。チャージというより、それは膝蹴りと表現したほうが適当だろう。
背中に一撃を食らったネイマールはその場に倒れ、苦痛に顔をゆがめたまま、動けない。担架でピッチを後にすると、もう戻ってこなかった。そう、もうこのまま、ワールドカップのピッチには戻ってこない。ネイマールのブラジル・ワールドカップは、終わってしまったのだ。
ネイマールが執拗にマークされ、激しいタックルに倒されるのは当たり前の光景になっていた。だが、この時はそれまでとは違っていた。激痛に手足をばたつかせたのも束の間、うつ伏せのまま動かなくなったネイマールに、誰もがただならぬ事態を予感する。そしてその予感は、的中する。脊椎の骨折、それが激痛の原因だった。
2-1で試合には勝った。だが、チームには暗雲が立ち込めた。全治約1か月と診断されたネイマールは、大会中の復帰が絶望となった。その事実を知ったチームメイトは、全員が悔しい思いでいっぱいになった。この大会に懸けるネイマールの意気込みを、全員が知っていたからだ。身体に気を配り、コンディションを整え、それこそ全身全霊をこのワールドカップに捧げ、自分のためではなくチームのために戦うネイマールの姿を、チームメイトは知りすぎるほど知っていた。
だからこそ、全員が固く心に誓った。ネイマールのために戦おう、と。
「ネイマールの背負っていた責任を自分たちが引き受ける」
ダビド・ルイスはそう言った。
「ネイマールが助けてくれていた分を全員でカバーし、これからはみんなで乗り越えていかなければならない。彼の分も走って、彼のために優勝を勝ち取ろう」
フッキの言葉だ。
「クラッキの抜けた穴は、僕たちが全員で埋めないといけないんだ。優勝をネイマールに捧げよう。彼のためにプレーしよう。絶対に勝ってみせる」
フェルナンジーニョはそう語り、マイコンが続く。
「出たいのに出られないなんて本当に悲しいことだ。とにかくネイマールを応援しよう。ピッチに一緒に立てなくても僕たちにできることはある。そして、ピッチの中では彼の分まで走って、きっと勝利を勝ち取ってみせる」
ネイマールの痛み、苦しみ、悲しみを共有して全員でこの試練を乗り越え、絶対に優勝しようと、誰もがそう心に誓った。
試合会場のフォルタレーザから、ネイマールはチームとともに一旦、リオデジャネイロ州テレゾポリスの合宿所に戻り、翌日、ヘリコプターでサントスの自宅へと向かった。父親に付き添われ、テレゾポリスを後にするその姿を、選手たちは静かに見送った――。
文:大野美夏
ダビド・ルイスはそう言った。
「ネイマールが助けてくれていた分を全員でカバーし、これからはみんなで乗り越えていかなければならない。彼の分も走って、彼のために優勝を勝ち取ろう」
フッキの言葉だ。
「クラッキの抜けた穴は、僕たちが全員で埋めないといけないんだ。優勝をネイマールに捧げよう。彼のためにプレーしよう。絶対に勝ってみせる」
フェルナンジーニョはそう語り、マイコンが続く。
「出たいのに出られないなんて本当に悲しいことだ。とにかくネイマールを応援しよう。ピッチに一緒に立てなくても僕たちにできることはある。そして、ピッチの中では彼の分まで走って、きっと勝利を勝ち取ってみせる」
ネイマールの痛み、苦しみ、悲しみを共有して全員でこの試練を乗り越え、絶対に優勝しようと、誰もがそう心に誓った。
試合会場のフォルタレーザから、ネイマールはチームとともに一旦、リオデジャネイロ州テレゾポリスの合宿所に戻り、翌日、ヘリコプターでサントスの自宅へと向かった。父親に付き添われ、テレゾポリスを後にするその姿を、選手たちは静かに見送った――。
文:大野美夏