ブラジル 2-1 コロンビア|ブラジルが4強進出も、「全力疾走」の小さくない代償

2014年07月05日 サッカーダイジェストWeb編集部

守備固めの効果はなく、コロンビアの猛攻に晒され…。

 ブラジルが勝った。チリに続いてコロンビアを退けた。
 
 69分にD・ルイスが、フリーキックから無回転ドロップショットを突き刺すと、6万人を飲み込んだカステロンは絶叫の渦に飲み込まれた。世界一、幸せな空間になった。
 
 だが残りの21分間、スタジアムは女性たちの悲鳴に包まれ続けた。80分、ブラジルはPKを献上し、1点差に追い上げられた。指揮官スコラーリは守備固めに入ったが効果はなく、コロンビアの猛攻に晒された。コロンビアが仕掛ける、ゴール前にボールが弾む、ネイマールが倒される……そのたびに女性たちの金切り声が上がる。
 
 長い長い5分のアディショナルタイムを守り抜き、ブラジルは辛うじて準決勝進出を決めた。スタジアムはふたたび、幸せな空間となった。
 
 もっとも先を考えると、ドイツとの準決勝に向けて不安ばかりが募ってくる。若いセレソンはコロンビアの勢いをかわすことができず、激しい撃ち合いを繰り広げた。そのことでネイマールが負傷、T・シウバも軽率な行為から警告を受け、ドイツ戦に出られなくなった。
 
 経験不足のセレソンは落ち着いてペースを調整することができず、全力疾走を続けるしかない。ホームの大歓声がある、気合いが入っているといっても、いつかは限界がくるだろう。それが準決勝になるかもしれないのだ。
 
 ブラジルが明日への扉を開けた一方で、コロンビアの冒険に終止符が打たれた。チームとしての完成度ではブラジルを上回っていたが、決死の覚悟で挑んできた開催国の勢いに呑まれてしまった。
 
 だが、コロンビアが記憶に残る美しいチームだったことは間違いない。98年フランス大会を最後にワールドカップのパーティーから弾き出されたコロンビアの人々は、14年ぶりの夏を謳歌した。
 
 コロンビアのファンは口々に言っていた。
「我々は待っていたんだ」
 その喜びは、声を限りに歌い上げる国歌斉唱から十分すぎるほど伝わってきた。
 
 躍進の象徴となったJ・ロドリゲスが試合後、涙に暮れていた。この一戦にすべてを出し尽くしたが、勝利を手にすることはできなかった。だが、ブラジルを相手にPKを決めたことで、数日後に得点王というご褒美が贈られるかもしれない。そうなったら国中の人が、また幸せに浸るだろう。
 
取材・文:熊崎敬
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