【横浜】大量8得点の理由は、山中亮輔の「偽サイドバック」としての成熟だ

2018年07月21日 小林健志

「僕らサイドバックがインサイドを取って…」

山中は仙台戦で4ゴールに絡む活躍を見せた。(C)SOCCER DIGEST

[J1リーグ16節]仙台2-8横浜/7月18日/ユアスタ
 
 仙台にアウェーで圧巻の8ゴールを奪って勝利した横浜。攻撃陣や中盤の選手のパフォーマンスは軒並み素晴らしかったが、なかでも左サイドバックの山中亮輔の活躍は目覚ましいものだった。
 
 開始早々に天野純のゴールで先制して迎えた12分、山中は左サイドハーフの遠藤渓太からのパスをやや中央に入って受けると、ゴール前の伊藤翔へ正確なクロスを入れてゴールをアシストした。これはいわゆる普通のサイドバック的なプレーだが、圧巻は31分の3点目につながったプレーだ。
 
 この日アンカーに入った扇原貴宏は左サイドから中央へ入ってきた山中にパス。山中は相手のボランチ2人が食いつく前に前線の仲川輝人へとパスをピタリと通す。仲川は仙台のDF陣を振り切ってゴールを決めたのだが、山中は左サイドバックにもかかわらず、まるでボランチのような形で、中央で攻撃の起点になっていたのだ。
 
 52分には遠藤からのマイナスのパスをやはり中央寄りで受けてミドルシュートを決めている。これらのゴールシーンを見ると、とてもサイドバックのプレーには見えない。82分にも山中は左サイドで金井貢史へ縦パスを通し、金井のクロスからオリヴィエ・ブマルがヘディングシュートを決め、4ゴールに絡む活躍を見せた。
 横浜のアンジェ・ポステコグルー監督は最終ラインを非常に高く設定し、GKの飯倉大樹が多くの時間ペナルティエリアを出てプレーするなど、攻撃的なスタイルを根づかせようとしているが、その一環として、いわゆる「偽サイドバック」と称されるシステムを使っている。
 
 かつてグアルディオラ監督がバイエルン・ミュンヘンを率いた時に見せていた形で、サイドバックを攻撃時にボランチやインサイドハーフのいる中央へ動かす。こうすると中央で数的優位が作りやすくなり、そこからサイドへ展開し、攻撃を組み立てていく。サイドバックに正確な足下の技術とゲームメイク能力が求められる難しい戦術だ。
 
 Jリーグでは昨季からJ3の福島を率いる田坂和昭監督がこのシステムを採用し、攻撃的MFの橋本拓門を右サイドバックとして活躍させた例はあるが、ポステコグルー監督は日本のトップリーグであるJ1でこの超攻撃的システムに本格的に挑戦している。

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