「闘莉王さんや俊輔さんのように…」長友佑都が“金髪”に込めた8年越しの覚悟【西野ジャパン23戦士のストーリー#10】

2018年07月14日 サッカーダイジェストWeb編集部

「彼のゴールは格別でした。自分自身のボールのような感覚でした」

長友はセネガル戦後、本田のゴールを格別と喜んだ。(C)Getty Images

 粘り強い戦いで勝点1をもぎ取ったセネガル戦の後、感慨深げに振り返った。盟友の一撃についてだった。
 
「おっさんたちが結果を出したいという気持ちがすごく強かったから、彼のゴールは格別でした。自分自身のボールのような感覚でした」
 
 長友が格別と表現したのは、途中出場の本田が決めた値千金の同点弾だ。
 
 強い危機感を持って迎えた自身3度目のワールドカップだった。登録メンバー23人の平均年齢が高いというサポーターの指摘には、SNS上で反論。世間の反応は賛否両論に分かれた。今年は長年過ごしたイタリアのインテルから、トルコのガラタサライに移籍。コンスタントに出場機会を得て、コンディションは右肩上がりで上昇した。自らの状態には自信を持って6月を迎えていた。
 
 だが、西野監督の初陣となった5月30日のガーナ戦に続き。スイス戦も同じスコアの0-2で敗れる。どちらも強化試合とは言え、チームといての形がなかなか見えてこなかった。
 
 6月8日のスイス戦後の取材エリアで、「これではワールドカップでは勝てない。自分たちの質が低いことを認めないといけない」と話す長友の口調は強かった。それまでもチーム内のミーティングで訴えてきた主張を、この日はあえてメディアの前で発信したわけだ。
 
 スイス戦の2日後、長友は金髪でオーストリア合宿の練習場に姿を現わし、注目を集めた。「髪の色ぐらいは明るくね。これ、笑うところなんですけど」と、努めて明るく振る舞った。
 
 8年前の南アフリカ大会では。田中マルクス闘莉王が檄を飛ばした。「俺たちは弱い。そこから戦い方を考えていかないといけない」。そんな刺激もあり、チームがまとまっていく過程を長友は体験していた。
 
「3度目となるロシア・ワールドカップでは、闘莉王さんや(中村)俊輔さんのように、若手を引っ張るような存在にならないといけない」
 
 髪を金髪に染めたのは、抱いていた危機感を共有するためでもあったのだろう。長友なりのやり方で示した覚悟が、チームの闘志に火をつけたに違いない。

取材・文●松落大樹
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