心を打ったモドリッチの“全身全霊”。「リスペクトすべきだった」と英メディアには苦言

2018年07月12日 白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト)

疲労の中で魂を込めて戦い抜いた。

モドリッチはクロアチアを史上初のW杯決勝に導いた。(C)

【ロシアW杯準決勝】クロアチア 2-1 イングランド/7月11日/ルジニキ・スタジアム(モスクワ)

 今大会でMVP級の活躍を見せ、クロアチアを力強く牽引してきたルカ・モドリッチが、準決勝でも魂のハイパフォーマンスを見せた。

 蓄積された疲労の影響は、間違いなくあったに違いない。なにしろ準決勝に辿り着くまでこのキャプテンは、65分で途中交代したアイスランド戦を除き、PK戦にまで突入したラウンド・オブ16と準々決勝を含めてフル出場してきたのだ。ベスト8と比較すると、タッチ数(139→85)やパス本数(102→74)、キーパス(4→2)とすべてが減っている通り、これまでの試合と比較するとボールに絡む頻度はやや低かった。

 しかし、柔軟なボールキープやパスの精度(成功率は84%)は相変わらず。イバン・ラキティッチやマルセロ・ブロゾビッチと連携してポジションチェンジを繰り返しながら、組み立てから仕掛けの中心に。得意のアウトサイドのパスも随所で見せた。

 そして何より、魂を込めて戦い抜いた。誰よりも必死にセカンドボールやルーズボールを追いかけ、172cm・66kgとクロアチアで最も小柄で細身ながらもイングランドの巨人たちに果敢なデュエルを挑んだのだ。
 
 延長戦でらしくないコントロールミスをした時は、すぐに切り替えてボールを追いかけてタックルで被カウンターを防ぐ。そのまま座り込んでしまいそうなほど疲弊していたが、シメ・ヴルサリコに抱きかかえられながら何とか立ち上がり、再び走り出したシーンは、観る者の心を打った。119分の交代まで文字通り全身全霊を懸けて戦ったモドリッチは、試合後にこう語っている。

「イングランドのジャーナリストやレポーターたちはみんな、クロアチアは疲れている、死んでいる、歩いているだろうと言っていた。僕らはそれを聞いて、"OK、誰が疲れているか見せてやろうぜ"って誓い合ったんだ。ウチを過小評価していたし、それは大きな間違いだった。彼らはもっと謙虚に相手をリスペクトすべきだったね」

 W杯の決勝進出は、1998年大会の3位を超える建国史上最高の成績。"黄金の"と形容されながら国際舞台で結果を残せずにいたクロアチアのモドリッチ世代だが、ついに世界制覇まであと一歩のところまで辿り着いた。

 運命のファイナルは7月15日。戦力的にはもちろん、体力的にもスケジュール的にも明らかに不利(対戦相手のフランスは3試合連続で90分勝利+休みが1日多い)だが、モドリッチとクロアチアは準決勝と同じく最後まで勇敢に戦い続けるに違いない。

取材・文:白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト編集部)
 
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