ルカク、フェライニ、ヤヌザイ…躍進ベルギーを支えるアンデルレヒトの育成術【ロシアW杯】

2018年07月10日 サッカーダイジェストWeb編集部

技術に加えて“柔軟性”を育む

ルカク(背番号9)やフェライニ(背番号8)など、アンデルレヒトの下部組織で育った選手たちの“柔軟性”が今大会のベルギーの躍進を支えている。(C)Getty Images

 準々決勝でブラジルを下し、勢いを増す"赤い悪魔"ことベルギー。2018年ロシア・ワールドカップでベスト4に到達した"爆発力"の源には、選手の育成法にもありそうだ。

 今回のベルギー代表23人のうち8人が、ベルギーの1部リーグ『RSCアンデルデヒト』の下部組織の出身だ。ロメル・ルカク、ヴァンサン・コンパニ、レアンデル・デンドンカー、ユーリ・ティーレマンス、ドリース・メルテンス、アドナン・ヤヌザイ、ミチ・バチュアイ、そしてマルアン・フェライニがそうだ。

 13歳で下部組織に入団したルカクが、16歳でトップチームに昇格し、デビュー1年目で得点王になったエピソードはだれもが知るところだが、ベルギーは2004年から国を挙げて育成改革に着手しており、その中心クラブがアンデルレヒトだった。

 逸材を次々に輩出する秘訣とは何なのか。英紙『Gurdian』の取材に、同トレーニングセンターのディレクター、ジーン・キンダーマンスが答えている。

「始まりは、ルカクの存在だった。ルカクの父が、彼が15歳のとき、リール、RCランス、オセール、サンテティエンヌがルカクに興味を示したと私たちに告げた。これらのクラブは学校、宿泊施設、サッカー教育を提供できると」。

 その数か月後、アンデルデヒトでもサッカーの始動だけではなく、学校教育や心身のケアなども含め、すべてを包括した育成プラン「パープルタレントプロジェクト」が開始された。

 10年以上たった今、それは「パープルタレントプログラム」と呼ばれるようになり、現在の下部組織で応用される育成プログラムとして活用されている。
 
 在籍中は年齢ごとにチームが編成され、常に競争意識のある環境で育てられる。実技以外に座学なども取り入れ、精神面の育成にも力を入れている。

 特に力を入れているのが、"柔軟性"の鍛錬だという。

「我々のアカデミーには、ベースに3-4-3システムがあり、そこをスタートに4-3-3など15のパターンに発展していく。そのため、考え方がつねに柔軟でなければならない。自分たちの強みや弱み、相手チームの戦い方、長丁場のシーズンの中でのタイミング、そしてゲームの重さによってどのシステムを採用するかが決まるからだ。

 16歳や17歳になると、アンデルレヒトの戦い方が自然に身について、勝利が期待できるようになる。若いグループには3-4-3システムが基本だが、定期的にポジションは変更する。多才なプレーヤーを作ることは、知的で丸みを帯びた人間の開発を助けるはずだ」

 技術を養いながら人間性を育て、選手として、人間としての価値を高める。そこに柔軟性が加わることでチームに幅をもたらし、心身の教育が身についた結果、どんなチーム、相手と戦ってもスムーズに対応できる力が備わるということなのだろう。

 ちなみに、下部組織が掲げるモットーは「ハードワークは才能を打ち負かす」。才能や与えられた条件だけに頼らない、確かな実力をつけることこそが勝利への近道だと教えている。

 こうした教育を受け、高い技術と柔軟性を持ち併せ、決定力に長けたベルギーの選手たちは今大会、ついに花開いた。
 彼らは7月10日の準決勝で、ベルギー同様、若い力が台頭するフランスとの対戦に挑む。
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