なぜフランスは無得点の9番を使い続けるのか? 周囲の疑問に指揮官の答えは「華麗さはないが…」【ロシアW杯】

2018年07月09日 サッカーダイジェストWeb編集部

栄光のチームを知るからこその起用。

今大会では380分間プレーしながら、いまだに無得点のジルー。9番としては寂しい数字だが、指揮官のデシャンはそれ以外のプレーにおける重要性を説いた。 (C) Getty Images

 ロシア・ワールドカップもベスト4が出揃い、いよいよ佳境を迎えている。いずれも実力派のタレントを揃える欧州の国々が残ったなかで、とりわけ注目したいのが、12年ぶりのファイナルを目指すフランスだ。

 母国開催で栄冠を勝ち取った1998年大会のキャプテンだったディディエ・デシャン監督の下、ポール・ポグバやアントワーヌ・グリエーズマン、キリアン・エムバペといった精鋭たちがまとまり、グループリーグは盤石の首位通過を果たし、決勝トーナメントでは、アルゼンチンとウルグアイという南米の強豪を破ってきた。

 そんな"レ・ブルー"において、気になる選手がいる。CFのオリビエ・ジルーだ。今大会は6試合中5試合に出場しながら、なんとここまで0ゴールなのだ。

 ハリー・ケインやロメル・ルカクといった他国のエースがゴールラッシュを決め込むなかで、エースナンバーの「9」を背負いながら、ゼロ行進を続けるジルーの得点能力を疑うメディアは少なくない。
 

 なぜ、フランスは無得点のストライカーを使い続けるのか?

 その問いに対するデシャン監督の回答は、「確かに彼はまだ得点していない。『だから何だ』ということを私は繰り返すよ」というものだった。

「彼は他の選手とは違って、華麗なスタイルを持っていないかもしれないが、だとしても、彼は他のことでチームに貢献してくれている。得点がなくたって私は彼を使うよ」

 ジルーに対して、デシャンがここまでの厚い信頼を寄せるのは、世界制覇を成し遂げた1998年大会の残像が残っているからかもしれない。

 というのも、同大会で、ジルーと同様に9番を背負っていたステファヌ・ギバルシュも、決勝までの7試合中6試合に出場しながら無得点に終わっていたのだ。それでも、当時の代表指揮官エメ・ジャッケは、「守備を怠らない真の戦士だ」としてギバルシュを起用し続け、ブラジルとの決勝でもスタメンで送り出していた。

「オリビエは私のチームにとっても、我々のプレースタイルにとっても、重要な存在だ」と断言するデシャンは、ジルーがエムバペやグリエーズマンといった役者を際立たせていると話す。

「アルゼンチン戦でオリビエはキリアンをサポートしてくれたね。私はあのサポート力を求めている。もちろん彼が得点できれば最高だが、たとえゴールがなくても、彼はいつもチームの重要な役割を担ってくれている。それに彼は、不平不満を漏らさずに、何でも熱心に取り組んでくれる寛大さも持っている。

 オリビエがいることで、攻撃だけじゃなく、守備も楽になる。彼が攻守のバランスを巧く取るからこそ、その恩恵を周りの選手が受けられるんだ。どうしても局面のプレーに目がいきがちになるけれど、彼には本当に助けられている」

 黒子役として地味ながらチームに多大なる貢献をしているジルー。その存在こそがフランスの躍進を支えているのである。
 
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