「どう大会を去るかが重要だった」ロシア代表の指揮官は、最後までカッコ良かった【ロシアW杯】

2018年07月08日 サッカーダイジェストWeb編集部

「世界にプライドを見せつけ、価値を知らしめた」

世界的には無名の存在だったチェルチェソフ監督。その剛腕で次から次へと強豪・難敵をなぎ倒していった。(C)Getty Images

 死力を尽くしたが、PK戦で涙を呑んだ。出場32か国中、FIFAランクが最下位の70位だったホストカントリーは"美しき敗者"となって、初夏の檜舞台を後にした。
 
 準々決勝でクロアチアの後塵を拝したものの、ロシア代表の不屈のメンタリティーは称賛に値するものだ。チームをそんな闘う集団へと進化させたのが、スタニスラフ・チェルチェソフ監督だ。自身もロシア代表GKとして2002年日韓共催大会に出場した経験がある54歳は、まさに選手たちの兄貴分のように振る舞い、叱咤激励を続けてきた。ホットでポジティブなメッセージを発信し続け、選手のみならず国民をも勇気づけたのである。
 
 クロアチア戦後、指揮官はこんな風に大会を総括した。
 
「開幕前から、私は"いかにしてこの大会を去るか。去り方がとても大事だ"と自分に言い聞かせてきた。それはもちろん、プライドを存分に示して去れるかどうかを意味する。だから、ベスト8に進んだとしても考え方に変わりはなかった。この(ワールド)カップを我々が掴むチャンスなど微塵もないと思っていたから……。選手たちはよく闘った。ロシアのプライドを世界に見せつけ、その価値を知らしめたのだ。まあでも、こうして負けてしまうとやはり悲しいものだね」

 
 そして、試合前後にウラジーミル・プーチン大統領と電話で話したことを明かした。
 
「さっきも大統領と話したのだが、彼は『とても素晴らしいゲームだった。君たちは誇りだ。目をしっかり開いて、次のステップに進んでほしい』と言ってくれたよ。国民も同じ感情を抱いてくれたのではないかと思う。全力を尽くした選手たちを褒めてあげてほしい」
 
 EURO2016はグループリーグを突破できず、1分け2敗の惨敗に終わったロシア。その直後に代表チームの立て直しを託されたチェルチェソフ監督は、若手選手を積極登用し、対戦相手の分析を徹底して複数のフォーメーションを操りながら、選手たちに自信を植え付けていった。見事に2年間で、世界の強豪へと鍛え上げたのである。
 
 ファンへのメッセージを問われると、「みなさん、おめでとう。ロシア・サッカーは威厳を取り戻した」と手短に返した。国民の絶大な支持を得る指揮官は、どこまでも飾らず、最後までカッコ良かった。
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