『ネイマール』であることは過酷だ…ブラジル代表幹部が至宝の苦悩を明かす

2018年07月08日 サッカーダイジェストWeb編集部

なにをやっても「批判され、称賛もされる」

10代の頃から超が付くほど巨大な重圧と戦ってきたネイマール。今回の“ショック”も振り払うことができるか。(C)Getty Images

 ブラジル代表の野望は、ベスト8でついえた。そして2度目のワールドカップに臨んだ至宝ネイマールの夢も、"赤い悪魔"ベルギー代表の前に砕け散った。
 
 大会前からこの千両役者は、数え切れないほどの話題を提供した。2月にパリ・サンジェルマンで足の甲を骨折して離脱を余儀なくされ、ワールドカップに間に合うのかどうかで世界をソワソワさせた。復帰に向けたリハビリ中にもSNSを通してメッセージを発信し続け、クラブがリーグ優勝を決めた際にポーカーに興じていたことが判明して大バッシングを浴びると、選手本人に近い関係者がレアル・マドリーと接触の事実があったことを暴露して騒然とさせる。
 
 ワールドカップが開幕してからも、周辺は常に騒がしかった。鮮烈なゴールで喝采を集めたかと思えば、度重なるファウルがあったとはいえあまりにもシミュレーション、あるいは過剰に痛がる"演技"が多く、欧米各国のメディアが嫌悪感を露にした。良くも悪くもこの数か月間、ネイマールはいつも話題の中心にいたのだ。

 
 そんなネイマールの葛藤と苦悩を、間近で見守っていた人物がいる。ブラジル代表のテクニカル・コーディネイター(日本で言うところの技術委員長)を務めるエドゥ・ガスパールだ。ワールドカップ敗退後も批判に晒されている至宝を見かねて、擁護と弁護に回ったのである。
 
「少なくとも私が出会ってからずっと、ネイマールは苦しんできた。『ネイマール』であり続けることはきわめて過酷なんだ。みんな忘れてはいないか。彼は怪我を負った。ワールドカップになんとか間に合ったが、3か月もいっさい練習をしないで、大会前に3週間練習しただけで本番を迎えたんだ。ただ、彼はネイマールだ。泣き言など言わなかった」
 
 そしてマスコミの、世間の反応をこう皮肉るのだ。
 
「彼が笑えば、批判され、称賛もされる。泣けば、批判され、称賛もされる。報道陣に口を開かなければ批判され、称賛もされる。これがどれだけ簡単ではないことか、我々は想像で推し量ることしかできない。彼の名誉のために強調しておくが、ネイマールはなにひとつチームの規律を破ってはいないんだ。報道ではひとりだけ別のホテルに宿泊していたとか、そこに父親が一緒だったなどとあったが、まったく真実ではない。そうしたことがあるたびに彼がどれだけ苦痛に感じてきたかを、よく考えてもらいたい」
 
 底抜けに明るい性格で、ポジティブシンキングの印象が強いネイマール。だがその元気溌剌な姿とは裏腹に、実像はとても繊細で、脆い青年だとも言われる。
 
 いずれにせよ、ワールドカップ敗退のショックを振り払い、またピッチの上で躍動するクラッキの姿を一日でも早く見たい。その一点については、肯定派も否定派も、同じ思いではないだろうか。
 
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