【W杯 伝説への挑戦】逞しさを増す10番 「ネイマールあってのセレソン」

2014年06月28日 大野美夏

ここぞの場面でゴールを決める勝負強さがエースの証。

エースの重責を果たしながら試合ごとに逞しさを増す「10番」ネイマールを中心に、チームの雰囲気も良好のようだ。 (C) Getty Images

 クロアチアとの開幕戦では、逆転勝利をもたらす2ゴール。続くメキシコ戦は、スーパーセーブを連発してマン・オブ・ザ・マッチに輝いた相手の守護神、ギジェルモ・オチョアの堅守を崩せずに終わったものの、最後のカメルーン戦でも再び2ゴール。エースとしての責務を果たしたネイマールは、セレソンをグループAのトップ通過に導いた。
 
 カメルーン戦の先制弾、左サイドからのルイス・グスタボのクロスに合わせたゴールは、右足で柔らかくコントロールして決めた。追いつかれた後の勝ち越し点は、縦パスを受けて持ち込み、みずからシュートコースを作り出して奪った一発だった。1トップのフレッジに待望の初得点が生まれ、終わってみれば4-1の快勝は、ドリブルやパスも冴え渡ったネイマールの活躍を抜きには語れない。
 
 国内メディアも、ネイマールあってのセレソンだと、それこそ手放しで称賛している。とくに、ここぞという場面で貴重なゴールを決めるその勝負強さこそエースの証だと、そう評価しているのだ。
 
 いよいよ、頂点へと続く戦いが始まる。ここからはノックアウト・ラウンド、すなわち負けたら終わり、失敗の許されない戦いだ。21歳のネイマールは、これまでリベルタドーレス・カップやロンドン五輪といった大舞台のノックアウト・ラウンドを経験しているが、ワールドカップという究極の大舞台でのそれは、文字通り未知の世界だ。
 
 とはいえ、エースの重責を担いながらここまで結果を出し、試合を重ねるごとに逞しさを増しているネイマールに、そうした心配は杞憂なのかもしれない。その成長ぶりに手応えを感じているルイス・フェリペ・スコラーリ監督も、
「メッシは現時点でたしかに世界を代表する素晴らしい選手だが、ネイマールは成長が著しい。このワールドカップの出来次第で、世界最優秀選手を争うことになるだろう。彼にはその器がある。いつかメッシを超える日が来ると信じている」
 と、絶対的な信頼を寄せる。
 
 そしてスコラーリ監督は、チリ戦に向けて重要な決断を下したようだ。これまで、昨夏のコンフェデレーションズ・カップを制した優勝メンバーにこだわり続けてきたフェリポン(スコラーリ監督の愛称)が、パウリーニョ、ダニエウ・アウベス、フッキと精彩を欠く3人を外し、それぞれフェルナンジーニョ、マイコン、ラミレスを先発で起用するという。
 
 サポート体制の充実は、ネイマールにとっても心強いはずだ。
 
文:大野美夏
 
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 ネイマール、リオネル・メッシ、クリスチアーノ・ロナウド――。自他ともに認めるブラジル・ワールドカップの主役候補の3人だ。彼らが挑むのは、ただし今大会の主役の座という限定的な栄誉ではないだろう。
 
 いずれもサッカー史に名を刻みうる特別な才能であり、ブラジルのネイマールはペレ、アルゼンチンのメッシはマラドーナ、ポルトガルのC・ロナウドはエウゼビオという、それぞれの国のレジェンドを超えうるカリスマだ。
 
 ブラジルの地で、いわば伝説に挑む3人の天才。その闘いに密着してお届けしよう。
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