予選敗退のイタリア、意外にも国民は「アッズーリ」不在のW杯を楽しんでいる!?

2018年06月21日 サッカーダイジェストWeb編集部

ネガティブではあるが、初めての新鮮な体験

「蚊帳の外」にある今夏だが、イタリア国民はW杯をそれなりに楽しみ、マンチーニ代表監督は復権に向けて、早くも忙しく動いている。写真は同国サッカー連盟の120周年イベント。 (C) Getty Images

 日々、熱戦が繰り広げられているロシア・ワールドカップだが、そのなかにイタリアの姿はない。大舞台の常連でもあった「アッズーリ」は、今予選のプレーオフでスウェーデンに敗れたため、1958年スウェーデン大会以来、実に60年ぶりに「部外者」となったのだ。
 
 アッズーリは今、ロベルト・マンチーニを新監督に迎え、今年9月から始まる新大会「UEFAネーションズリーグ」、そしてEURO2020予選への準備を進めている。
 
 新指揮官はロシアW杯について、「ドイツ、ブラジル、アルゼンチンの低調なスタートは意外だったが、これがW杯だ。しかし、彼らはグループステージを突破すると思う」と語ったものの、関心はアッズーリの強化や国内リーグの活性化に全て向けられているようだ。
 
 一方、誇り高いイタリア人だけに、国民も自国が予選敗退を喫した大会には無関心なのだろうと思いきや、意外にも国内での視聴率は非常に高いという。
 
 もちろんカードにもよるが、優勝候補ブラジルがスイスと引き分けた一戦では、746万1000人がこれをテレビ観戦し、視聴率が36.3パーセントを記録したと『Corriere della Sera』は伝えている。
 
 もちろん、アッズーリが出場していれば、6千万人を超える人口の大部分がテレビの前に釘付けになり、視聴率も倍に近い(以上の?)数字を記録するだろうが、他国同士の試合の視聴率と考えれば、これは驚くほど高い数字と言えよう。
 
 イタリアでは通常、W杯などのビッグスポーツイベントは公共放送の「RAI」が放映するものだが、今回は予選敗退で国民が失望しているという状況を鑑み、公共サービスよりも商業的な面を重視して、放映権獲得を見送った。
 
 代わりに日本円にして100億円以上を費やし、この権利を落札したのが、「メディアセット」。ミランのオーナーとして長くサッカー界に君臨し、政治の世界ではイタリアの首相にまで昇り詰めたあのシルビオ・ベルルスコーニが総帥を務めた「フィニンベスト」グループの傘下にあるメディアグループだ。
 
 まだ大会は序盤だが、メディアセットの判断は大正解であり、RAIは後悔しているのではないかと、『Corriere della Sera』は見ている。
 
 同紙はまた、予想外にW杯の視聴率が高いことについて、「アッズーリの不在が原因」という興味深い推論を綴った。
 
 自国の代表チームが出ていないことで、イタリア国民はリラックスし、スポーツ界の最大のイベントを純粋に楽しめているのではないか? ということだ。毎回、優勝を狙うような国だっただけに、これまでは見る側にも相当な労力が求められていたのかもしれない。
 
 同紙はこれについて、あくまでも推測だが、と前置きしてはいるが、多くの国民にとって、アッズーリのいないワールドカップは初めてであり、ネガティブなこととはいえ、それが新鮮な体験となっているのは間違いないだろう。果たして、大会が進むにつれて、カルチョの国ではどのような反応が見られるだろうか。
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事