「個も、組織も」 コロンビアに力負けした日本代表の進むべき道

2014年06月25日 熊崎敬

強いチームは「強い個が強い組織を編んでいる」

ブラジルでは惨敗に終わったと言っていい日本代表。これからどう進んでいくべきか――。 (C) SOCCER DIGEST

 コートジボワール戦は試合以前の精神面の未熟さで敗れ去った。
 
 ギリシャ戦は日本らしいプレーを見せたが、勝負のピントがずれていた。
 
 これらのゲームに比べたら、コロンビア戦の日本はいま持っている実力を出したと思う。1-4は実力通りのスコアなのだ。
 
 試合後の記者会見でザッケローニは次のように語った。
「もっとボールを支配するべきだった。速くパスを回し、選手が適切な距離を保って、ボールを失っても攻撃する。11人で守って、11人で攻撃できると、日本は問題なくプレーすることができる。ブラジルでは、それができなかった」
 
 全員守備と全員攻撃。それがザッケローニ監督の下、日本が突き進んできた道。だが、この哲学には決定的な欠陥が存在する。サッカーがサッカーである以上、すべての局面を数的優位で解決することはできないのだ。
 
 コートジボワール戦では敵の技量に圧倒され、サイドバックが上がれなかった。そうなると攻撃陣はひとりで前を向き、ひとりで突破し、ひとりでシュートを放たなければならない。それができないばかりに攻撃陣は沈黙することになった。本田のゴールを除けば、ほとんど何もできなかった。
 
 勝つしかなくなったコロンビア戦は、サイドバックやボランチが果敢に攻め上がり、攻撃面では数的優位を作ることができた。だが、攻撃陣は岡崎の1ゴールに終わり、数が足りない守備陣は4失点を喫することになった。
 
 日本人は俊敏で生真面目、きびきび動けば90分のすべての局面を数的優位で解決できる――。そんなふうに考えているとしたら、間違いだ。クライフが語ったように、ボールは疲れず、人よりも速く走る。そのことを忘れてはいけない。
 
 個か、組織か。
 日本のサッカー界で長く議論されてきたテーマだ。ブラジル大会が1分け2敗に終わったいま、また多くのメディアをにぎわせることだろう。
 
 だがぼくは、「個か、組織か」とは考えない。正しいのは「個も、組織も」でしょう。コロンビアにはたしかに強い個がいくつも存在した。だが、組織がなかったというわけではない。そんなことをいったら、コロンビア人とペケルマン監督に失礼だ。
 
 55分に生まれた、2点目のゴールが象徴的だった。
 右サイドの奥深くでグアリンが日本人ふたりをひきつけ、S・アリアスに預けた。アリアスは敵ふたりの間をすり抜け、J・ロドリゲスに預けた。ロドリゲスは日本の守備陣を引きつけ、マルティネスをフリーにした。そしてゴールが決まった――。
 個人の冒険が噛み合って生まれた、美しいゴールだった。
 
 日本サッカー界は長く、組織サッカーを目指してきた。その根底には「ぼくたちは個が弱いから、完璧な組織を作りましょう」という考えがある。
 
 でも、これでは何も始まらないのだ。
 このワールドカップを見ていると、強いチームは「強い個が強い組織を編んでいる」ということがよくわかる。「弱い個が強い組織を編もうとする」日本は、そうしたチームにいつまで経っても勝てないだろう。
 
 もう10年以上、日本サッカー界は「数的優位」、「個か、組織か」と言い続けてきた。ぼくも含めたライターや解説者は言葉遊びに溺れ、サッカーの本質を見極める努力を怠ってきた。その延長線上に、この敗北があるということを忘れてはいけない。
 
 試合が終わったばかりのクイアバのメディアセンターで、ぼくはいま、そんなふうに思っている。
 
取材・文:熊崎敬

【写真で振り返る】コロンビア戦
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