【W杯キープレーヤー解体新書】パウリーニョ|戦術パズルに欠かせない重要な1ピース

2014年06月23日 ロベルト・ロッシ

最大の長所はタイミングを見極めた前線への攻め上がり。

ここまでの2試合はいまひとつの出来。グループリーグ突破が懸かるカメルーン戦で、本来の姿は見られるか。 (C) Getty Images

 スコラーリ監督が就任以来、一貫してレギュラーに据えてきたボランチで、中盤にアグレッシブネスとダイナミズムをもたらす貴重なダイナモだ。
 
 守備的なキャラクターが強く、最終ラインの手前でフィルター役をこなすグスタボが「静」のボランチなら、パウリーニョはダイナミズムと運動量を売りとする「動」のボランチ。指揮官はこの組み合わせに、最良のバランスを見出したのだろう。
 
 最大の長所は、タイミングを見極めた前線への攻め上がり。シンプルなプレーでビルドアップに絡んだ後、展開を見ながらスルスルと位置を上げ、完璧なタイミングで縦に走り込んでフィニッシュに絡む。セカンドボールを拾っての思い切りのいいミドルも武器だ。
 
 守備の局面では献身的にボールを追い、アグレッシブなコンタクトプレーでピンチの芽を摘むハードワーカーだ。個人技術、個人戦術が特別に優れているわけではないものの、傑出したダイナミズムでそれをカバーしている。タイプ的にはインサイドハーフに近いが、ブラジルのメカニズムのなかでは、攻撃に厚みをもたらす存在でありながら、守備にもプレーの量で貢献する役回りを担い、効果的に機能している。
 
 グスタボとのペアは、守備だけを見ればフィジカル的なプレゼンスや空中戦の強さが不足しており、攻撃ではポゼッションの質を高め、局面を前に進める展開力に欠けている。にもかかわらず高い機能性を発揮しているのは、最終ラインのT・シウバとD・ルイス、そしてオスカールを筆頭とする2列目のアタッカー陣と優れた相互補完の関係にあるからだ。傑出したダイナミズムと効果的な攻め上がり。他のチームメイトが持たないこの特長によって、パウリーニョはスコラーリの戦術パズルに欠かせない1ピースとなっている。
 
分析:ロベルト・ロッシ
構成:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト 出場32か国戦術&キープレーヤー完全ガイド』p11より抜粋。
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