共通意識ができていない西野ジャパン… 守備・攻撃から現状認識まで各所にチグハグさや温度差

2018年06月11日 飯間 健

「危機感は感じていない」と西野監督。一方で長谷部は「手詰まり感が凄い」

オーストリアのゼーフェルトで合宿を続ける日本代表。パラグアイ戦に向けてチームを立て直せるか。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 ロシア・ワールドカップのグループステージ初戦・コロンビア戦まで残り8日。本番まではあす12日に行なわれる親善試合・パラグアイ戦しかなくなった。フルスロットルで本番へ向かわないといけない時期。だが、その前段階の歯車そのものが噛み合っていない状況に陥っている。

 8日の親善試合・スイス戦。西野監督就任後初の4バックシステムを試した。5月30日の親善試合・ガーナ戦よりは守備でのスムーズさは感じさせた。ただオーストリアのゼーフェルト入り後は前線からのプレッシングを主にトレーニングを行なってきたが、1トップの大迫勇也とトップ下の本田圭佑のところで効果的なプレスが掛からなかった。

 その理由は明白。宇佐美貴MF原口元気の両サイドハーフが大迫と本田に連動できず、自陣に下がってしまう傾向にあったからだ。そのため全体の重心も後ろに掛かり、大迫は個人でプレッシングを掛け続けるしかなかった。「今はおのおので守備をしている感じがするし、それは良くない」。大迫の言葉からはチームとしての組織づくりが、あるいはチーム全体での柔軟な対応が徹底できていないことを窺わせた。

 守備面の連動性の欠如だけではない。3年間指揮を執ったヴァイッド・ハリルホジッチ監督を4月上旬に解任。うるさ型の前任者から、選手の意見を取り入れる柔軟型の西野監督にバトンタッチし、堅守速攻のスタイルを継続しつつ、同時にボールポゼッションも取り入れる方針に切り替えた。だがスイス戦はクロスを上げられる場面でもサイドで手数を掛けてしまうことも多く、決定機はゼロ。大迫は「サイドに入った時にセンタリングを上げて良いと思う。そこは皆に伝えた」と話したが、つなぐ意識が強くなりすぎて、一番肝心のゴールを奪うというタスクが疎かになっていた。
 
 極めつけは監督と選手の温度差だ。西野監督は「なぜネガティブにならなければいけないのでしょうか。良いチャレンジはできている。チームとしての危機感は感じていない」と豪語したが、主将の長谷部誠は「アイデア、精度が欠けている。手詰まり感が凄い」と苦い表情を浮かべ、長友佑都は「厳しいな。これではワールドカップで勝てない」とバッサリ切って落とした。楽観的な指揮官とは裏腹だ。

 守備のやり方、攻撃のバリエーションと精度、そしてワールドカップ本大会を見据えた上での世界と自分たちの距離感。本番が近くなる中、どこかひとつにでも共通意識ができているようには感じられない。だが日本サッカー協会の田嶋会長は「勝つ可能性を1パーセントでも2パーセントでも上げるため」に、大会2か月前にハリルホジッチ監督解任に踏み切ったのである。西野監督就任後、わずか1か月しか準備期間がないという言い訳は通用しない。

取材・文●飯間 健
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