“ラストチャンス”に懸けるメッシとアルゼンチン代表の「本気」

2018年06月03日 山本美智子

最終調整はメッシの“第2の我が家”で。

ベストのメッシを引き出すために――。母国での合宿を終えたアルゼンチン代表が最終調整の地に選んだのは、バルセロナだった。(C)REUTERS/AFLO

 5月31日に母国での代表合宿を終えたアルゼンチン代表は、6月1日からロシア・ワールドカップに向けた最終準備を、スペインのバルセロナで行なっている。

 どうやらホルヘ・サンパオリ監督は、本気で世界の頂点を狙いにいっているようだ。アルゼンチンが32年ぶり3回目の世界制覇を成し遂げるためになにが必要かを、彼は熟知している。

 リオネル・メッシの心身のコンディションを最高の状態に持っていく。それが彼らの最大の目的であり、代表チームのスタッフはいま、そのために全力を傾けているといってもいい。

 毎日のトレーニングに利用しているのは、バルサの練習場『ジョアン・ガンペール』。練習初日には、メッシがみずから代表のチームメイトを連れて施設を案内した。

 慣れた気候と街並み、そして、少し車を走らせれば家族に会いにいける場所。アルゼンチンの魂とも言えるメッシがW杯に向けた最終調整を行なううえで、これ以上の環境はない。
 
 ブラジル・ワールドカップでは準優勝に終わったアルゼンチン。彼らがワールドチャンピオンに返り咲くためにはメッシの力が絶対不可欠であり、そのメッシの異次元とも言える能力をフルに活かせるとすれば、年齢的(6月24日で31歳)にもおそらく今大会がラストチャンスになる。

 メッシ自身もそのことに気づいているのだろう。現在彼はみずからのコンディションを最大限に持っていくためのあらゆる努力を払い、並々ならぬ決意を胸に調整に励んでいる。バルサの練習場をアルゼンチン代表の練習施設に使用するというアイデアも、もしかすると彼発信のものかもしれない。

 バルサの関係者は言う。「レオ(メッシの愛称)はここで朝食をとり、日々の練習を行ない、家族との約束がないときは、昼食もここで食べるんです。彼にとっては"第二の我が家"といってもいい場所かもしれませんね」

 バルサの練習場『ジョアン・ガンペール』は、メッシが生活する上でそれほどに大きな意味を持つ場所なのだ。

 スペイン紙『Mundo Deportivo』の電子版は、FIFAのアンケートに対するメッシの回答を掲載。「人生における最良の決断は?」の問いには「本当に辛い状況にあったとき、バルサに残る決断を下したこと」と応じ、「世界最高のスタジアムは?」には「カンプ・ノウ」と答えるなど、そこにはバルサへの愛情が溢れる回答が並んでいた。

 もちろん、アルゼンチン代表に対する愛情も深い。アルゼンチンのスポーツ紙『Ole』によれば、サンパオリ監督はメッシに5月いっぱい特別休暇を与え、バルセロナでの最終調整からの合流を勧めていたものの、メッシはこれを断り、みずからの意思でアルゼンチンのエセイサで実施された代表合宿に、初日から参加したのだという。

 また同紙は、メッシが今年から、バルサのチームメイトであるルイス・スアレスとともにフィジカルトレーナーを雇い、身体能力の向上を目指して日々のトレーニングにキックボクシングを取り入れたことなども報じていた。

『ジョアン・ガンペール』での調整は8日まで続き、アルゼンチン代表9日、ワールドカップ前最後の強化試合となるイスラエル戦(エルサレムで開催)に臨む予定だ。

 メッシとアルゼンチン国民の悲願を懸けたロシア・ワールドカップ。開幕のときは刻々と近づいている。

文●山本美智子(フリーランス)
 
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