21年ぶりの浦和戦勝利で湘南が示したもの。曺監督を唸らせた選手たちの“自立感”とは?

2018年04月29日 橋本啓(サッカーダイジェスト)

「ちょっと言ったらすぐ反応できるようになっている」(曺監督)

浦和から21年ぶりに勝利。湘南の選手たちは喜びを爆発させた。(C)SOCCER DIGEST

[J1リーグ11節]浦和 0-1 湘南/4月28日/埼玉

 湘南にとっては、単なる1勝ではなかった。浦和から挙げた勝利は1997年以来、実に21年ぶり。前節、G大阪から奪った20年ぶりの勝利に続く快挙に、選手や監督たちの喜びもひとしおだろう。

 勝ち星の意義はそれだけではない。湘南の曺貴裁監督は満足気にこう振り返った。

「ピッチの中での自立感というか、相手がロングボールを蹴るのであればこうする、逆に、我々がボールを持っている時にどうしなきゃいけないのかっていうところの判断は、間違いなく初めてJ1に上がったシーズンよりも良くなっていると思います」

 前節のG大阪戦、そして浦和戦とも、曺監督の目には選手たちの成長した姿が映っていた。局面に応じて、プレーの選択を誤らないか――。以前であれば、その点を逐一気にかけていたが「ちょっと言ったらすぐ反応できるようになっている」(曺監督)という。

 もっとも、今は指揮官の指示がなくても選手たち自身で問題を解決できるレベルにまで到達しているようだ。
 終盤、猛攻を仕掛けてきた浦和の圧力を受ける展開を見て、曺監督の頭にはDFをもう1枚投入するプランもあったという。ところがピッチ上では、その考えを思いとどまらせるほどに一体感に満ちた戦いぶりが繰り広げられていた。

「もうちょっとキープしてサイドに持って行って欲しかったけれど、ここまでラインを下げなかったら絶対守れるっていう空気だった。本当は後ろの選手を入れて固めようかなと思ったんですけど、それをするとリズムが崩れるから止めました」

 結果的にこの判断は「吉」と出た。湘南の倍近い13本のシュートを浴びながらも、手堅く守り切り完封勝ち。そこには、指揮官の言う選手たちの"自立感"が確かに見て取れた。

「選手が守れる、点が取れるっていうふうに思った時って、戦術云々という問題を越えていけると思うし、疑心暗鬼でその戦術に取り組めば上手くいかない。彼らがピッチ上でどういう風に感じているのかはこれからも見ようと思っています」(曺監督)

 これまでとはひと味違う。そう感じさせるほどに、湘南の戦いぶりには充実感が漂っている。

取材・文●橋本 啓(サッカーダイジェスト編集部)
 
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