ロシアW杯での「VAR」採用に追い風? “先進国”イタリアでは好影響を示すデータも

2018年04月24日 サッカーダイジェストWeb編集部

シミュレーションは昨季から43%減。

依然として批判的な意見が多い「VAR」だが、今シーズンから導入しているイタリアでは、一定の成果が出ているようだ。 (C)Gstty Images

 4月23日、セリエAの各クラブの幹部や監督、選手たちが、審判団との年次総会に臨んだ。イタリア・サッカー連盟(FIGC)によると、審判部門責任者のニコラ・リッツォーリ氏が発表した33節までのデータからは、今シーズンから試験導入されたビデオアシスタントレフェリー(VAR)の好影響がうかがえたようだ。

 昨シーズンと比較し、セリエAではファウルが8.8%、退場が6.4%、警告が14.7%の数がそれぞれ減少。抗議による退場は、昨シーズンの11回に対してわずか1回に留まっている。PKの数は4.3%増となったが抗議の数は19.3%減。シミュレーションに至っては、43%も減ったという。

 すべてがVAR導入による効果とは言えないだろうが、少なからず影響していると考えられる。
 
 そのVARだが、イタリア国内での346試合(セリエA=330試合、コッパ・イタリア=16試合)で計1736回の「チェック」を記録。内訳は、ゴールに関するものが916回、PKに関するものが464回、退場に関するものが356回で、実際に判定が修正されたケースはそのうち105回だった。その結果、ミスジャッジはわずか17例に留まり、試合の結果に影響するほどのミスは8例しかなかった。

 VARに否定的な意見のひとつとして、「時間が止まりすぎること」が挙げられる。しかし、リッツォーリ氏によると、実際のプレー時間は昨シーズンと比べても平均で43秒しか増えていないという。

 判定にかかる時間も、開幕から3節までは平均で1分22秒を要したが、その後は31.5秒まで縮まった。判定が覆ったケースも、同じく3節までは平均2分35秒かかったものの、4節以降の平均時間は1分22秒(VAR32秒+オンフィールドレビュー50秒)となっている。

 もちろん、VARがすべての問題を解決するわけではなく、課題も少なくない。プレミアリーグは来シーズンからの導入を見送り、UEFAのアレクサンデル・チェフェリン会長も、チャンピオンズ・リーグへの導入は時期尚早としている。

 一方で、FIFAはロシア・ワールドカップでのVAR採用を決め、賛否両論を呼んだ。セリエAでのデータは、少なくともW杯での採用には追い風と言えるかもしれない。
 
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