掲げられたコミットは? 親会社撤退の歴史を持つ湘南がライザップ傘下入りを決断した背景

2018年04月09日 隈元大吾

1999年の親会社撤退から約20年、親会社不在のまま成長を続けてきたクラブに新展開。

湘南ベルマーレがライザップグループの傘下に入ることとなった。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 去る4月6日、都内で会見が行なわれ、湘南がフィットネスジム運営会社RIZAP(ライザップ)グループの連結子会社となることが正式発表された。ライザップは湘南の筆頭株主である三栄建築設計と合弁会社を設立し、湘南の株式の過半数を保有して経営権を取得、2018年から2020年の3年間で10億円以上を出資して、チームの強化育成を側面からサポートするという。
 
 親会社フジタの撤退に伴う1999年の存続危機を経て、湘南ベルマーレは翌2000年、ベルマーレ平塚から運営を移行し、責任企業を持たない市民クラブとして再出発した。J1への復帰を志しながら、限られた予算のなかで試行錯誤のシーズンを過ごし、その後、クラブとして中長期の絵を描きながら、ゆっくりと、しかし着実に歩を進めた。クラブのフィロソフィーを育みながら昇格争いにも徐々に加わるようになり、2009年には反町康治監督のもと、3位でフィニッシュして11年ぶりのJ1昇格を決めた。2012年より指揮を執る曺貴裁監督のもとでは2012年、2014年、2017年と3度昇格を経験し、2015年にはJ1で8位の成績を収め、湘南として初めてJ1残留も果たした。降格しても2年とJ2にとどまることはなく、現在はより高みを見据えるまでに成長を遂げている。
 
 クラブの存続に奔走し、以降もクラブの発展に尽力を続ける眞壁潔代表取締役会長は、これまでの歩みを踏まえて語る。
「1999年の親会社の撤退より約20年、湘南ベルマーレは本当にたくさんの市民の方、行政の方、株主の方に支えられ、10年をかけてJ2からJ1へ復帰し、そして行ったり来たりするようになった。日本のスポーツ界において、親会社なくここまで成長してきたこの20年はおそらく他に類を見ないのではないかと自負している。ただ、昨今チームも強くなり、次のステップを考えなければいけないと思うようになっている」
 
 そうしてクラブの次を見据えるなかで、1年半ほど前にライザップとの縁を得た。以来、互いのシナジーが合致するのか、湘南の信念とライザップのビジョンが重なるのか、筆頭株主の三栄建築設計も交え、時間をかけて対話を重ねてきたという。眞壁会長は「その結果、今日を迎えています」と、会見の席上で言った。
 
 湘南とライザップのコミットとして、2020年までにJ1、天皇杯、ルヴァン杯のいずれかのタイトル獲得と満員のスタジアムを掲げる。また具体的な取り組みとして、トレーニングメソッドの開発やトレーニング環境の構築、革新的なテクノロジーの活用などが挙げられているが、各論はこれからだという。
 
「プロはプロに任せるのがグループの考え。我々は徹底的に寄り添い、まずは学ばせていただく」
 こう語るライザップの瀬戸健社長は、側面からのサポートを強調した。
 
 発表から間もないJ1リーグ6節、湘南はホームに鹿島を迎えた。幸先よく先制し、すぐに追いつかれるも、後半アディショナルタイムにDF山根視来が決勝ゴールをねじ込み、リーグ戦では開幕戦以来となる白星を挙げた。ライトグリーンのスタジアムが歓喜に包まれる。劇的な勝利とこのうえない高揚感のなかで、クラブは新たな一歩を踏み出した。
 
取材・文●隈元大吾(フリーライター)
 
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