中島翔哉が示した光明――非凡なメンタルは9年前の本田圭佑を彷彿させる

2018年03月30日 サッカーダイジェストWeb編集部

「最初から自分が蹴るつもりで、ピッチの中で”蹴らせて下さい”と言いました」

マリ戦、ウクライナ戦と2試合連続で途中出場し、存在感を示した。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 6月14日に開幕するロシア・ワールドカップに出場する日本代表はベルギー・リエージュ遠征を終えて、28日に帰国の途に就いた。23日にマリに1―1で引き分け、27日のウクライナ戦は1―2で敗戦。ワールドカップ出場権のない2チームに苦戦し、欧州組を出場した試合は昨年10月6日のニュージーランド戦を最後に5戦も白星から遠ざかっている。厳しい状況に陥るなか、数少ない光明が、今遠征で初招集された中島翔哉(ポルティモネンセ)だった。
 
 マリ戦に60分から途中出場して国際Aマッチデビューを果たすと、アディショナルタイムに右クロスを左足で合わせて劇的な同点弾を決めた。ウクライナ戦は69分から途中出場。チーム最多3本のシュートを放つなど流れを変えた。

 中島はチーム解散後にリエージュ市内で取材に応じ「2試合ともまずは結果を出したかった。やることはまだまだあると思いますけど、ここ(代表)で学ぶことができた。凄く楽しかったですし、またチームに帰ってからしっかりと成長していきたい」と意欲的。ハリルホジッチ監督も「中島はひとつの発見。2試合とも途中から出たが、満足いくプレーをしてくれた」と高く評価した。
 
 小雨の降るピッチで、気概を感じさせるシーンがあった。ウクライナ戦の後半アディショナルタイム。ドリブル突破を試みた中島が倒されて、中央やや左、距離約18メートルの位置でFKを獲得した。ハリルホジッチ監督がキッカーに宇佐美を指名するなか、中島は「蹴らせて下さい」と先輩に直訴。5枚の壁の右を抜く低い弾道の右足シュートで右隅を狙ったが、GKの好セーブに阻まれた。
 
「監督は宇佐美君が蹴れと言っていましたけど、最初から自分が蹴るつもりで、ピッチの中で"蹴らせて下さい"と言いました。自分で獲ったFKだったので、譲ってくれたんですけど、決められなくてすごく悔しい」。勢いのある23歳の若手によるFKキッカーの"強奪"は、9年前を想起させた。
 
 2010年の南アフリカ・ワールドカップ出場権獲得後の09年9月5日の親善試合オランダ戦(エンスヘーデ)。当時23歳だった本田は後半開始から途中出場すると、63分の直接FKの場面で、絶対的なセットプレーキッカーだった中村に「蹴らせて下さい」と直訴した。

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