「俺は袋叩きにあったんだ」オランダの至宝はなぜマンUで輝けなかったのか

2018年03月21日 サッカーダイジェストWeb編集部

目下リヨンで出色のパフォーマンス!

相変わらず“我が道”を行くデパイ。マルセイユの本拠地ヴェロドロームでこのパフォーマンスでは、反感を買うのも無理はない。(C)Getty Images

 先週末のフランス・リーグアンは、ひとりの男の劇的なゴールに沸き返った。
 
 主人公は、リヨンのオランダ代表FWメンフィス・デパイだ。30節のマルセイユ戦、敵地ヴェロドロームでの大一番は2-2のスコアのまま、アディショナルタイムに突入した。試合を決めたのは、後半途中からピッチに登場していた背番号11。GKアントニー・ロペスのロングフィードをFWマリアーノが頭で中央へつなぎ、そこに猛然と飛び出したデパイも頭で合わせる。これが相手GKの頭上を越え、ループ気味にゴールに流れ込んだのだ。

 
 ユニホームを脱いで激しく地面に叩きつけ、喜びを表現するデパイ。見れば競り合いの時に衝突したのだろう、左目の横をカットして流血している。怒号渦巻く大ブーイングを聞くまいと両耳を塞ぐと、無数のレーザーポインターで攻撃を受けた。

 
 地元リヨンは熱狂した。チャンピオンズ・リーグの出場権を争う3位のマルセイユを相手に勝利を飾り、4位のリヨンは勝点差を2に縮めたのだ。デパイは古豪を救う救世主となり、値千金の一撃をお見舞いしたのである。
 
 試合後、殊勲のスコアラーはこう振り返った。
 
「俺がピッチに入った時から、聞くに堪えないいろんな言葉を浴びせられた。カッカきてたけど、あの最後のゴールシーンではすごく冷静だったんだ。どうしても勝ちたかった。だから決勝ゴールを決められて、我を忘れるほど喜んでしまった。イエローカードをもらってしまったよ(笑)」
 
 どこに行ってもブーイングに遭う。24歳になったアタッカーは十代の頃からビッグマウスで鳴らし、挑発的な言動が少なくない。リヨンのサポーターは温かくサポートするが、プレミアリーグ時代の先入観もあるのだろう、フランスでも敵地に赴くと不人気ぶりが顕著だ。
 
 オランダの名門PSVアイントホーフェンで才能を育まれ、2015年夏に鳴り物入りでマンチェスター・ユナイテッドの一員となる。移籍金は3000万ポンド(約44億円)の高額。自身が希望して、伝統のエースナンバー7を許された。デパイの獲得を切望したのはほかでもない、同胞のルイス・ファン・ハール監督だ。両者は前年のブラジル・ワールドカップを師弟として戦っていた。デパイはグループリーグ第2戦のオーストラリア戦で決勝点を奪い、これが同国のワールドカップ最年少得点記録に。20歳と4か月での快挙だった。
 
 特大の期待を背負ってマンチェスターでの新たな挑戦をスタートさせたデパイだったが、チームは攻守の歯車が噛み合わず、自身も低調なパフォーマンスに終始する。やがて途轍もないプレッシャーにさらされ、ファンやメディアからバッシングを受けるようになるのだ。

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