【現地発】元リバプールの名物解説者が起こした“唾吐き騒動”の真相と英国内の反応

2018年03月21日 山中忍

騒動から1週間が経った今――。

現役時代から、熱くなると我を忘れてしまう傾向があったキャラガー。その悪癖が引退後に一般人に向けて出てしまった……。 (C) REUTERS/AFLO

 3月10日(現地時間)のマンチェスター・ユナイテッド対リバプール(2-1)のダービーマッチ後に起こった、ジェイミー・キャラガーの唾吐き事件が発覚してから1週間が過ぎた。「弁解の余地はない」という当人は、解説者として雇われている『Sky Sports』から今シーズン末までの謹慎処分を受けた。
 
 英国では他人に唾を吐く行為が暴行罪に問われることもあるが、並走していた車の助手席で唾を浴びた少女の父親に訴える意思がないことから、警察当局の捜査も打ち切られた。そして、騒ぎは収まった感がある。
 
 その最大の理由は、事件の当事者たちにスポットライトが当たらなくなったこと以上に、加害者、そして被害者とも、明らかに愚かな行為に及んでいたと人々が気付いたからだろう。
 
 もちろん、開けた車の窓越しに唾を吐いたキャラガーの行動は責められて当然だ。問題行為が明るみに出た直後には、『Sky Sports』に即刻解雇を求める声が寄せられていることが、メディアで盛んに紹介された。
 
 サッカー・ファンではない人々の純粋な憤りか、はたまたリバプール・ファン以外のサッカー好きによるきつい冗談かは定かではないが、リーグ優勝経験のないリバプールのレジェンドに対し、「プレミアリーグ優勝メダル剥奪」を求める者まで現われた。

 さらに元チェルシーの名ボランチで、現在は俳優として活動しているヴィニー・ジョーンズは、俳優業で見せる悪役さながらに「父親は車で追いかけてボコボコにしてやれば良かったんだ」と、辛辣な言葉を吐き捨てた。
 
 だが、その父親にも責任がないとは言えない。程なくして名前とともに、マンUの熱烈なファンであることをメディアに突き止められた42歳の男性は、キャラガーの車に気付くと、「2−1!」「2−1の勝利だ!」と繰り返して、リバプール一筋でキャリアを終えた元DFをからかい続けた。
 
 隣に座る娘が「パパ、やめてよ」と言っていたのだから、愚かな行動以外の何物でもない。その上、一部始終を自身の携帯でビデオに収める行為は、運転中の携帯使用を禁じる法規違反。今回の一件で被害者と言えるのは、制止の声を父親に無視された挙句、額にツバが飛んできた14歳の少女だけだった。

次ページ今回の騒動は“キャラガー対一般人”ではなく…。

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