【指揮官コラム】三浦泰年の『情熱地泰』|女子カーリング日本代表が伝えてくれた笑顔の素晴らしさ

2018年02月27日 サッカーダイジェストWeb編集部

女子カーリングの活躍が思い出させてくれた“笑顔”にまつわるエピソード。

日本カーリング女子の準決勝、そして3位決定戦の激闘に釘付けになった人も多いはず。三浦監督もそのひとりだった。(C) Getty Images

「笑っている場合ではない!」
 
 僕の父は初孫が子どもの頃に『男は簡単に笑うな!』と言った。きっと心のうちとは裏腹に、可愛い孫の笑顔に癒される反面、これから大人へと成長していくなかで数多くの試練、苦しいこと、悔しいことがあると言いたかったに違いない。それが可愛くて、嬉しくてたまらない初孫への『笑うな!』という笑える言葉になったのであろう。だからきっと僕もそうやって育てられたのかもしれない……。
 
 人間誰しも、きっといつでも「笑顔」でいたいと思うはずだ。「笑う」ということは、健康にも身体にも良いことであろう。
 
 眉間にシワを寄せて、いつも怖い顔をして悲壮感と孤独感が感じられるような、シリアスな状況に立っている人の身体はきっと目に見えない所で悲鳴をあげているのかもしれない。そんなシリアスな状況でも「笑う」ことが出来たら……と思うことは多い。
 
 タイでこんなことを教わったことがある。階級差がはっきりしている世界における闘い、タイ式に言えば"殺し合い"の勝利とは何か?
 
 それは『友達になること』だというのだ。殺し合う相手と笑い合える仲になることが勝利なのだと……。深い話だ。
 
 僕が学生の頃、先生に職員室に呼び出されたことがある。そんな時、頭にきている僕に対して、先輩がこんなアドバイスをしてくれた。
「ヤス、ニコっと笑って謝れ」と。
 
 僕は気持ちとは裏腹に、先生にニコっと『すみませんでした』と呟く。すると、いつもは大きな声で怒鳴る先生が、小さな声で『な! ヤス……』と、優しい口調で先生の言い分を説明してくれたのである。
 
 僕にしてみても、先生にしてみても「笑っている場合ではない!」はずだったが、幸せな解決であった。
 
 こんな事を思い出したのは、今回の平昌オリンピックで女子カーリング日本代表が銅メダルを獲得したからなのである。
 
 この女子カーリングジャパンは世界中に幸せを与えたのであろう。あと一歩でファイナリストを逃したが、『金』と『同じ』と書いて『銅』と読ませる漢字。3位決定戦での勝利は、その字の如き『金と同じ』価値であり、笑顔、笑い、仲間、団結、まとまりを貫いた女子カーリングジャパンのスタイルへの大きな称賛に値するものだ。

次ページ「やっさん、いつも怒ってますね」と言われ……。

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