札幌が制した「パシフィック・リム杯」 MLSとの切磋琢磨は新たな可能性を秘めている!

2018年02月16日 宇都宮徹壱

中国勢や豪州勢とも異なる相手と対戦できる。

パシフィック・リム杯の初代王者に輝いた札幌。GK菅野が表彰を受ける。写真:宇都宮徹壱

 日本とMLSの4クラブが、太平洋の東と西からハワイに結集して対戦するパシフィック・リムカップ。その第1回大会はホノルルのアロハ・スタジアムで開催され、Jリーグから唯一の参加となった北海道コンサドーレ札幌が見事に優勝を果たした。ちなみに準優勝と3位は、バンクーバー・ホワイトキャップスとコロンバス・クルーのMLS勢。いわきFCは4位に終わったが、バンクーバーに0−1、コロンバスに3−5と善戦している。本稿では、パシフィック・リムという大会の意義について、あらためて考えてみたい。
 
 この大会の仕掛け人は、ブルーユナイテッド・コーポレーション代表の中村武彦氏。MLSの勤務経験を持ち、日本サッカー界で誰よりも北米サッカーのビジネスに精通する人物である。では、「環太平洋のチャンピオンシップ」という発想はどこから生まれたのか。
 
「日本サッカーの向上を考えた時、アジアだけでは限界がある。でも、ヨーロッパも南米も遠いし、それぞれの大陸で完結している。ならば、太平洋を越えてMLSのチームと切磋琢磨すればよいのではないか」というのが、中村氏の一貫した考えであった。
 
「Jリーグの開幕は93年、MLSは95年。言ってみれば、年の近い兄弟です。もっとも、ビジネス的には弟のほうが急成長していますが(苦笑)。最近は日本でもMLSは注目されるようになりましたが、もっとピッチ上で切磋琢磨する機会があっていい。それにMLSはJリーグと同じシーズンです。開幕前の2月、日米の中間地点にある温暖なハワイで大会を実施するのは、とても意義があるし理にかなっているとも思います」(中村氏)
 
「国際経験の場」という点で考えるならば、Jリーグの強豪クラブにはACLという舞台がある。だが、そこで対戦する相手は当然ながら「アジア人」。スーパーな外国籍選手を擁する中国勢や、非アジア系のオーストラリア勢との対戦で鍛えられる面もあるが、たとえば「スタメンの半分がアフリカ系」という相手と対戦することはまずない。「世界を目指す」ことを謳っているJクラブにとって、MLS勢との対戦できるパシフィック・リムは、将来的には貴重な国際経験の場となる可能性を十分に秘めている。
 

次ページ課題は現地の練習環境、試合会場の芝……。

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