プロ20年目の葛藤と試行錯誤… 中澤佑二はなぜ進化のメンタリティを持ち続けられるのか?

2018年02月07日 藤井雅彦

団体行動を原則とする新体制の下で、日々のルーティンを実践できない?

2月で40歳を迎える中澤だが、今季もチームリーダーとして絶大な存在感を発揮する。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 中澤佑二のプロ20年目が幕を開けた。
 
 横浜の開幕戦が行なわれる2月25日には、節目となる40歳の誕生日を迎える。昨年末、契約更改の際には「自分はこのマリノスというクラブで優勝したい」と真剣な眼差しで語り、今季に懸ける意気込みを高らかに宣言。そして「プロ20年目で自分の最高のパフォーマンスを出せるようにしたい」と敢えてハードルを高く設定した。

 
 横浜は新たにアンジェ・ポステコグルー監督を招聘し、『アタッキング・フットボール』を指標に掲げてスタート。ショートパス主体のサッカーに取り組んでいる。6日に行なった福岡との練習試合は疲労の影響もあって0-2と敗れたが、その中にスタイルを体現しようと必死にもがく背番号22の姿があった。
 
 敵陣で過ごす時間を長くするという思考の下、今季の横浜は最終ラインを常に高い位置に設定する。ハイラインとハイプレッシャーは基本戦術となり、そのため「センターバックもたくさん運動量を求められる」と中澤も大忙し。だが自陣での守備を疎かにするわけにはいかない。指揮官の要求にしっかり応えつつ、相手FWもしっかり監視する。被カウンターの場面では中澤とミロシュ・デゲネクが福岡の前線と2対2になる場面もあったが、水際で防ぐ守備能力は健在だ。
 
 新監督の目指すスタイルに早くも順応しているように見えるが、実際は苦労の絶えない日々を過ごしている。ポステコグルー監督はキャンプ中の団体行動を原則とし、食事は朝・昼・夜のすべてを全員が揃ってからスタートさせる。あるいは練習前に室内でショートミーティングを行なうため、個別にウォーミングアップの時間を確保することが難しい。
 
 中澤は日々のルーティンを実践できない葛藤を抱えながらも「監督が代わってグラウンドの中と外の両方で変化がある。まずやってみるという姿勢が大切」という前向きなスタンスで取り組み、新監督の意向を尊重している。付け加えるならば、それをチームの先頭に立って率先して行なうことで後輩選手たちの道標となっている。
 
 練習前後に補足トレーニングができない不安と戦いながらも、新たなスタイルにアジャストしようと試みる。それどころか「今までの殻を破って新しい自分を作っていきたい」と進化を目指す。現状維持は停滞であり、気がつけば退化となる。常に先へ進もうとする信念を持っているから、中澤は4年連続フルタイム出場という偉業を成し遂げ、現在もフィールドプレーヤーにおける連続フル出場記録を伸ばし続けている。
 
 優勝を目指す横浜において、中澤は最重要人物のひとり。チームを勝たせるCBがトリコロールを牽引する。
 
取材・文●藤井雅彦(ジャーナリスト)
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