バルサの隠れた功労者ヴェルメーレン「僕が“ガラス製”じゃないってことを証明できた」

2018年01月13日 山本美智子

ミナの獲得に踏み切れたのも彼の存在があればこそ。

ヴェルメーレンがバルサの一員として出場した公式戦は32試合。数こそ少ないが24勝7分け1敗と、実は驚異的な勝率を誇っている。リーガはいまだ無敗(15勝2分け)だ。(C)Getty Images

 現地時間1月11日、バルセロナはかねてから噂のあったパルメイラスのコロンビア代表CBジェリー・ミナの獲得を発表した。移籍金は900万ユーロ(約11億7000万円)+ボーナス250万ユーロ(約3億2500万円)。さらにバルサは、育成費として60万ユーロ(約7800万円)をパルメイラスに支払うことになるという。

 この補強により、すでに中国スーパーリーグの河北華夏幸福と合意に達しているハビエル・マスチェラーノの退団は、秒読み段階に入った。23歳のミナが入団し、33歳のマスチェラーノが退団する。今冬の移籍マーケットを通じて、バルサのCBは一気に若返りに成功したことになる。

 ただ、ヨーロッパでのプレー経験がないミナが、バルサという独自の哲学を持つクラブでどの程度やれるかは未知数だ。しかも、シーズン途中での加入。同じタイミングで名手マスチェラーノを失うことを考えると、「ギャンブル」と言っても過言ではないこの補強に踏み切れたのは、ひとりのベテランCBの存在が大きいと言われている。

 2014年夏にバルサに入団し、昨夏にレンタル先のローマから戻ったトーマス・ヴェルメーレンだ。度重なる怪我を乗り越え、招集外が続く屈辱の週末に耐え、昨年末に見事復活を遂げた32歳のベルギー代表は、1月1日の『Mundo Deportivo』に掲載されたインタビューの中でこう語っている。

「僕はいま、すごく幸せだ。ローマから復帰したばかりの頃は、すべてが難しい状況だった。だから、耐えなければならなかった。フィジカルが完璧な状態じゃなかったときは、ひたすらトレーニングに励み、目標に向かって集中し、口を開くことはせず、チャンスが訪れる日をただ信じて、自分を最高の状態に持っていくために戦い続けた。そして幸運にも、その瞬間は訪れた」

 リーガ・エスパニョーラ13節のバレンシア戦(1-1)、出場停止のジェラール・ピケと怪我のマスチェラーノに代わり、ヴェルメーレンは今シーズンの公式戦初出場を果たす。続く14節のセルタ戦(2-2)は、ピケの戦列復帰によりベンチ要員に戻ったが、この試合の終盤に大黒柱のサミュエル・ウンティティが負傷。全治2か月と診断され、ふたたびヴェルメーレンに出場機会が回ってきた。

 入団2年目で著しい成長を見せていたウンティティの負傷離脱は、バルサにとって致命傷になりかねなかった。しかし、そうはならなかった。代役を務めたヴェルメーレンがこの窮地を救ったのだ。

「ここ数年は怪我のせいで本来の実力を発揮できなかった」

 長かった苦悩の日々を振り返ったヴェルメーレンは、「僕のフィジカルに疑問を持つ人がいるのはわかる」としつつも、「2016年11月以降は大きな怪我もなく、1年以上良い状態を維持している」と語る。

 そして印象的だったのは、「僕は"ガラス製"じゃないことを証明した」というコメントだ。怪我が代名詞になりつつあったヴェルメーレンは、バレンシア戦でエルネスト・バルベルデ監督の信頼を勝ち取ると、昨年末のレアル・マドリー戦でもフル出場を果たし、敵地での無失点勝利(3-0)に大きく貢献してみせた。

「準備の仕方はクラシコも他の試合も同じだけど、頭の中では、これが特別なゲームで、世界中が自分を注視していると思いながらプレーしていた」とクラシコを戦った感想を興奮気味に明かし、「この日を忘れることはできない」と振り返った。

 また、クラシコを自宅で観戦していたヴェルメーレンの息子たちが、スタメン発表後に「パパだ! パパだ!」と狂喜した動画が、SNS上で話題を呼んだことにも触れ、「妻が撮って送ってくれたんだ。この動画は永遠の宝物さ。彼らが大きくなったら見せてあげようと思っているよ」と、父親の顔も覗かせている。

 辛い時期を支えてくれた家族のためにも、ヴェルメーレンはこれからさらに飛躍してくれるはずだ。

文●山本美智子(フリーライター)
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