【選手権】上田西を長野県勢初の4強に導いた指揮官の手腕。原点はあのフィリップ・トルシエ!

2018年01月05日 松尾祐希(サッカーダイジェストWEB)

躍進の裏にはあったのはトルシエ監督の教え。

白尾監督は選手たちのコミュニケーションを密にとるスタイルで、チームをベスト4に導いた。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

[高校サッカー選手権]上田西 3-2 明秀日立/1月5日/駒沢

 長野の新興勢力が見せる快進撃の裏には、指揮官のコミュニケーション力があった。
 
 1月5日に行なわれた高校サッカー選手権の準々決勝。上田西(長野)は早い段階で明秀日立(茨城)に先制点を許し、4強入りに暗雲が立ち込めた。しかし、タフな戦いぶりで先制を許しながら3ゴールを奪うと、1点は返されたが、しぶとく勝利を掴んだ。これが長野県勢にとって初のベスト4入り。歴史を塗り替えた選手たちの戦いぶりに白尾秀人監督も思わず、頬を緩ませた。
 
 大会前、12年ぶり2度目の出場となったチームをベスト4に推す声は皆無だった。そして、迎えた選手権。183センチの大型ストライカー・根本凌(3年)や司令塔の宮下廉(3年)、最終ラインでチームを束ねる大久保龍成(3年)などを中心に1回戦から粘り強く戦うと、埼玉スタジアムの舞台へとたどり着いた。そこには選手たちの頑張りがあったのは間違いないが、指揮官の手腕もまた見逃せない。
 
 チームを率いる白尾秀人監督は、37歳の元Jリーガー指揮官だ。鹿児島県の与論島出身で高校時代は現在、長崎総科大附で指揮を執る小嶺忠敏監督率いる国見でプレーした。その後、国士舘大を経て、03年に当時J2のヴァンフォーレ甲府にFWとして入団。3年間で23試合・2得点という結果を残し、地域リーグ時代の松本山雅FCやV・ファーレン長崎などにも籍を置いた。そして、引退後は指導者の道に進んだ。
 
 指導者としてのキャリアを歩むなかで、白尾監督は影響を受けた指揮官がいると明かした。日韓ワールドカップで日本代表をベスト16に導いたフィリップ・トルシエ監督だ。日本に多くの歓喜をもたらした指揮官との出会いは、今から遡ること10年前。現役ラストイヤーとなった08年に琉球で巡り合った。そして、当時は地域リーグ所属だったチームの総監督に就任したトルシエ監督から多くのことを学んだという。

「高校時代の恩師・小嶺先生の存在も大きいですが、トルシエ監督の影響もある。FC琉球の時に関わったのですが、采配や選手起用は本当にすごく当たっていた。それは朝の散歩や、食事。その前の過ごし方。どういう風に過ごしているかを見てコンディションや調子を見極めて、決めていたところがあった。なので、僕もそうするようにしています」
 
 だからこそ、白尾監督が重視するのは選手とのコミュニケーションだ。

「選手の状況を見抜くのは難しいのですが、選手に『今日どうだ』と言って話しかけたり、リラックスをさせるような言葉を掛けたりして、なるべく壁を感じさせないようにしています」(白尾監督)

 選手たちも指揮官とはいろんなことを話せる関係であると明かしており、田嶌遼介(3年)は「白尾先生は自分から話しかけてくれて、本当に距離が近い。聞きたいことがあれば、聞きやすい」と、白尾監督との強い絆を感じさせるコメントを残している。
 
 6日の準決勝では上田西は全国屈指のタレント集団・前橋育英と対峙する。トルシエ監督から学んだコミュニケーション力を武器に、初の決勝進出を手繰り寄せられるか。白尾監督の采配にも注目だ。

取材・文●松尾祐希(サッカーダイジェストWeb編集部)
 
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