【選手権】Jクラブが熱視線を送る米子北の2年生ボランチ・佐野海舟が見せた涙の意味

2018年01月05日 森田将義

中村監督が評価したのは、「気持ちが出せるようになってきた」部分だ。

10番を背負う佐野は守備面で貢献したが……。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

[高校サッカー選手権・準々決勝]米子北 0-3 前橋育英/1月5日/駒沢

 2年生ながらも、複数のJクラブが熱視線を送る米子北の注目ボランチ、佐野海舟の冬はまたもや涙で終わった。
 
 唯一の下級生として挑んだ昨年とは違い、主軸としての自覚が芽生えた今年は、「この選手権で自分がどれだけ成長できるかが、チームが上まで行くことにつながる」と気合いも十分。初戦の山梨学院戦では、フィジカルで上回るU-18日本代表のFW加藤拓己に対して、憶することなくデュエルに挑み、中村真吾監督に「アイツがあれだけガツガツやるとは思っていなかったから、見直した」と言わしめた。
 
 2回戦、3回戦でも佐野のパフォーマンスは別格だった。「自分がやらなければ」という気持ちが強すぎたせいで、ボールを持つ時間が長くなり、結果的に奪われる場面も目についたが、守備では持ち前の予測力を活かしたセカンドボールの回収と、インターセプトを何度も披露。奪ってからも、正確な散らしで攻撃のスイッチを入れた。チーム史上最高成績となるベスト8まで進めたのは、彼がいたからと言っても過言ではない。
 
 しかし、前橋育英との準々決勝で突き付けられたのは厳しい現実だった。ボール奪取までは、いつも通りにできていたが、「相手の圧力に負けて、自分の思い通りにいかなかったし、相手の名前にも負けていたと思う。ボールを持っても、余裕がなく、視野も狭くなってしまった」(佐野)ために、チームが攻撃に移行できない。

 中村監督が指摘したのも攻撃面で、「ボール奪取率は高かったと思うけど、相手の攻守の切り替えが速くて、奪ってからつなげなかった。今後、彼に求められるのはそこだと思う。横への運動量はあったけど、縦に行けなかった」。
 
 放ったシュートは前橋育英が12本に対し、米子北は4本。スコア以上に力の差は歴然で、試合後の佐野は「すべてにおいて、相手が上だったし、今まで一年間やってきたことが甘かったと思う。試合を勝ち進むにつれて、良いプレーができなくなったので、心の余裕とかメンタルの強さを持たないといけない。全国には上には上がいる。できなかったことは分かったので、切り替えて1年後にここへ戻ってこられるように頑張りたい」と口にした。
 
 昨年と同じく、選手権は涙で終わったが、確かな成長を示したのも事実だ。中村監督が評価するのは、この日の試合後に彼が見せた行動。「気持ちが出せるようになってきた。今日も誰より一番先に泣いていたのは、この一年間の成長だと思う」。
 
 主将のDF三原貫汰(3年)も、佐野の成長を実感するひとりで、「プレミアの時は声が出せない試合が多かったけど、選手権は海舟から声を出してくれた。初戦の山梨学院戦も最初は、DF陣が加藤(拓己)くんとの競り合いに対応していたけど、途中から海舟が『俺にやらせてください』と言ってきた。気合いが違った」と証言する。中村監督が「選手は負けたことで成長する」と話すように、この悔しさをさらなる成長につなげることができれば、来年度は8強の先も見えてくるはずだ。
 
取材・文●森田将義(サッカーライター)
 
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