【番記者通信】失望ではなく希望が広がるアンフィールド|リバプール

2014年05月15日 ジェームズ・ピアース

スタジアムを支配していたのはプライド。

 すでに3日が経過した。劇的なフィナーレは訪れず、リバプールにおとぎ話はめぐってこなかった。
 
 最終節、2人の退場者を出したニューカッスルを2-1で破ったものの、アンフィールド(リバプールの本拠地)から車でおよそ30分離れたエティハド・スタジアムでマンチェスター・シティが快勝したために、夢ははかなく打ち砕かれた。
 
 とはいえ、そこに失望や落胆はなかった。スタジアムを支配していたのはポジティブな空気。チームを誇りに思う、プライドのようなものだった。スタンドにあいさつしたスティーブン・ジェラードと選手たちを迎えたのは、ファンのオベーションだった。
 
 ゴール裏スタンドには、シーズンを通して『Make Us Dream(夢を見させてくれ)』と書かれたバナーが掲げられていた。サポーターのその想いに、選手はずっと応えつづけたのだ。開幕前は、4位に入ってチャンピオンズ・リーグ出場権を獲得できれば御の字だったチームが、首位と勝点2差の2位でフィニッシュしたのだ。しかも、攻撃的なサッカーでファンを魅了した。総得点は101と三桁に達した。
 
 アウェーでトッテナムを粉砕した5-0の快勝、エバートンを4-0で一蹴したマージーサイド・ダービーでの完勝、首位快走中のアーセナルに地獄を見せた5-1の圧勝、敵地でマンチェスター・ユナイテッドを寄せ付けなかった3-0の大勝。34節のシティとの首位攻防戦にも3-2で勝利した。
 
 ルイス・スアレスは31ゴールで得点王を獲得し、その相棒を務めたダニエル・スターリッジはそれに次ぐランク2位の22ゴールと、ついにその実力を開花させた。
 
 ラヒーム・スターリングが独り立ちし、ジョン・フラナガンがブレイクを果たせば、ジョーダン・ヘンダーソンは覚醒。さらに、ジェラードは中盤の底から攻撃を司る新境地を開き、13アシストを決めてプレミアのアシスト王に輝いた。
 
 今シーズンのリバプールは、掛け値なしに素晴らしかった。アンフィールドには、失望ではなく希望が広がっている。
 
【記者】
James PEARCE|Liverpool Echo
ジェームズ・ピアース/リバプール・エコー
地元紙『リバプール・エコー』の看板記者。2000年代半ばからリバプールを担当し、クラブの裏の裏まで知り尽くす。辛辣ながらフェアな論評で、歴代の監督と信頼関係を築いた。
 
【翻訳】
松澤浩三
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