「混乱を招く」「好きじゃない」「時間がかかり過ぎ」R・マドリー陣営からVARへの不満が相次ぐ

2017年12月15日 サッカーダイジェストWeb編集部

イタリアなどでは一定の効果も出ているようだが。

正確なジャッジを下すためのVARだが、試合を中断させて選手を苛立たせてしまうなど、まだまだ課題は少なくない。(C)Getty Images

 イタリアやドイツで今シーズンから試験導入されているビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)だが、リーガ・エスパニョーラではまだ導入されていない。それだけに、クラブワールドカップでの不慣れなVAR判定に、レアル・マドリーの面々は戸惑い、そして苛立ちを覚えたようだ。

 現地時間12月13日に行なわれたクラブワールドカップ準決勝で、開催国のUAE王者アルジャジーラに2-1と逆転勝利を飾り、南米王者グレミオが待つ決勝へと駒を進めたマドリー。しかし、前半は山のように築いたゴールチャンスをひとつもモノにできず、逆に先制を許してしまうというよもやの展開を余儀なくされた。

 その前半、マドリーのフラストレーションを高める要因となったのが、30分に起きた出来事だ。イスコのクロスにカゼミーロが頭で合わせ、ネットを揺らす。当初レフェリーはゴールを認めるそぶりを見せたものの、ここで突如VARが介入。レフェリーは映像を確認したうえで、カゼミーロの近くにいたカリム・ベンゼマの位置がオフサイドだったとし、ゴールを取り消した。

 後半開始直後には、逆にアルジャジーラのゴールがVARで取り消しとなり、2点のビハインドを背負うという難局を辛うじて免れたマドリーだが、それでもVARに関しては、ジネディーヌ・ジダン監督を筆頭に不満の声が相次いだ。

 スペイン紙『Marca』によると、指揮官は「決断が下るまでに3~4分もかかるのはよろしくない。システムの良いところを引き出し、改善しなければいけない」と、まったく納得がいっていない様子をうかがわせた。

 また、この試合のマン・オブ・ザ・マッチに選出されたルカ・モドリッチは、「この問題に首を突っ込みたくない。僕らはサッカーのことだけを考えるべきだ。(導入するかどうかについて)僕らにできることはないからね」とコメント。VARに否定的なコメントを出して批判された過去の経験から、慎重な姿勢を見せつつも、「ちょっと混乱している」と改めて懐疑的な見解を示した。

「どういう状況で採用したいのかがわからない。いくつかのケースでは助けになるかもしれないけど、決定まで時間がかかり過ぎる。今日の試合みたいにね。これ以上は首を突っ込みたくない。僕らは慣れなければいけないんだ」

 一方、あからさまにVARを批判したのが、決勝点を挙げたガレス・ベイルだ。

「好きじゃない。ないほうがサッカーには良いと思う。でも、(利用するかどうかを)決めるのは僕たちじゃない」

 たしかに、セリエAやブンデスリーガでもVARを巡るトラブルや不満の声はなくなっていない。だが一方でマドリーのDFナチョは、「改善の必要は大いにあるだろう。こうも何度も中断していたら、ピッチにいて気が狂いそうになる。もっとも、これが完成形ではなく改善するためのものであるなら、今後も歓迎するけどね」とコメント。VARそのものは悪くないため、修正しながら改良していくべきとの考えを示した。

 イタリア紙『La Gazzetta dello Sport』によると、セリエAの審判部門責任者を務める元主審のニコラ・リッツォーリ氏は先日、VARの導入により、審判への抗議によって出されるイエローカードが30%減少したと、一定の効果が出ていることを強調している。

 新たな取り組みだけに、賛否両論があるのは当然だが、ロシアW杯でもVARを導入する考えを明らかにしているFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は、マドリーとアルジャジーラの一戦をどう見たのだろうか。
 
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