ハリル監督も上機嫌! “2連勝”は日本代表のヒエラルキーに影響を与えたか?

2017年12月14日 加部 究

代表チームの編成上で際立った変化が生まれたのか?

2連勝に口も滑らかだったハリルホジッチ監督。果たして、気前のいいコメントの真意は? 写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 2試合を終えて最大の収穫は「なるべく多くの選手を見たい」指揮官が、その言葉通りの采配を実践したことだ。ただしロシア・ワールドカップを見据えた国内組の最終テストという観点からすれば、代表チームの編成上で際立った変化が生まれたとも思えない。
 
 おそらくこの大会に向けて最も万全な準備ができていたのは、代表チームが年間を通して1日2部練習の合宿生活をしているという北朝鮮だ。しかも「日本でも見られないレベルのテクニックを持つ選手もいた」と、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督を驚かせた。逆に2戦目で対戦した中国は「国内リーグが1か月以上前に終了して、選手たちが45日間もプレーしていない」(マルチェロ・リッピ監督)状態だった。こうした対戦相手の条件を考慮しても、2戦目で日本のパフォーマンスが著しく良化したとも言い切れない。
 
 極論すれば、現状でハリルホジッチ監督が手にした収穫は、GKの底上げと伊東純也の発掘に尽きる。まずGKは川島永嗣が出場機会を独占してきたが、中村航輔も東口順昭もJリーグでは出色のプレーを続けて来た。北朝鮮戦の勝利は、スーパーセーブ連発の中村がもたらしたのは誰の目にも明らかだが、東口も終盤すっかり精彩を欠いたG大阪の中でひとり充実のパフォーマンスを見せていたので、今回抜擢された2人とも"当たった"のではなく本来の力を証明した。
 
 一方2戦を通じて、ハリルホジッチ監督が繰り返し賞賛したのが伊東だった。
「とても面白い選手。ボールを持ったら仕掛けていける。日本には1対1で抜いていける選手が少ないので…。3~4回もっといいプレーが出来る状況があったけれど、大腿部を打撲した影響があった」
 
 中国代表のリッピ監督は、日本の優位性をポゼッション能力だと指摘したが、むしろ日本代表の指揮官はそこを「Jリーグの持つ悪い習慣」だと捉え、縦に速いカウンターを徹底している。深い位置から細かく確実に繋ぐのではなく、確率は低くても裏を狙うターゲットへのロングフィードを優先するスタイルを求めているので、確かに伊東のように単独でも50m以上をドリブルで進みCKを獲得してくれる存在は貴重だ。
 
 ハリルホジッチ監督は「こうした選手たちがチームにプラスをもたらす」とご満悦だった。しかし川島に全幅の信頼を置く指揮官の心変わりを促せるのか。またお気に入りの浅野拓磨以外に「スピードスター枠」を設けるのか、と言えば、多少検討の余地が生まれたというあたりが現実的だろう。
 

次ページ「かなり高い確率で代表に入る」を真に受けるのは危険だ。

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