【選手権】進境著しい埼玉王者「昌平」 冬の舞台で初の頂点を目指す

2017年12月25日 平野貴也

「攻撃スタイルの進化」きっかけは夏の敗戦にあり

タレントが揃う前線は、ポジションの入れ替えが攻撃の活性化を生んだ。最終ラインもビルドアップの起点になるなど、チーム全体として、高い攻撃力を誇る。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

昨年のインターハイでベスト4に入り、全国にその名を轟かせた昌平。今年は攻撃のバリエーションを欠き、夏の全国で結果を残せなかった。しかし、夏以降は力強さが増し、課題を克服。最後の冬に結果を残す準備は整った。

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 埼玉県代表の昌平は、まだ2度目の出場だが、優勝候補に挙げられる。昨季は、夏のインターハイで優勝候補だった東福岡(福岡)を2回戦で破って全国4強に進み、松本泰志(サンフレッチェ広島)、針谷岳晃(ジュビロ磐田)がプロへ進んだ。

 今季もエースストライカーの佐相壱明は、大宮アルディージャへの加入が内定している。中盤の山下勇希を中心とした圧倒的なパスワークが特長で、ボールポゼッションから多彩な攻撃を仕掛けてゴールを陥れる。新人戦、関東大会、インターハイ、選手権と県大会で4冠を達成し、県リーグ1部も制覇。強さは、本物だ。

 佐相が「インターハイに比べたらマークは厳しくなったけど、味方を使って崩すプレーができるようになってきた。今までは前線に張ってパスを待つプレーが多かったけど、中盤に下がって味方を使ったり、下がるふりをして相手の背後に飛び出したりするプレーができるようになってきた」と話したように、選手個々が攻撃の選択肢を多く持っている。ポジションを入れ替えても機能するため、相手に応じた戦い方も可能だ。藤島崇之監督は、県予選を制した後に「(攻撃は)一本槍にならないことをテーマにやってきた。ビルドアップし続けることが目的ではないので、佐相に一発のパスを通すことにもフォーカスして、いろいろな選択肢を持ち合わせながらやっていくスタイルは、さらに良くなってきている。昨年よりもプレーの幅は広がっている」と手応えを語った。
 
 また、今季のインターハイ初戦で、準優勝した日大藤沢(神奈川)に敗れたこともチーム強化につながった要因のひとつ。圧倒的にボールを支配しながら1点しか取れず、相手のパワープレーに屈して逆転負けをしたゲームを経験し、藤島監督は「パスをつなぎに行き過ぎて、前に推進力がなく(引いて守る相手に対して)やりにくい部分が出てしまったので、ドリブルを少し増やした」と、攻撃の柔軟性を選手に要求。実際に県決勝の浦和西戦では、同点に追いつかれた直後に右MF森田翔が連携プレーから中央にドリブルで突き進み、決勝点となる強烈なシュートを叩き込んだ。

 相手に警戒されてもゴールをこじ開けにいく力強さ――。夏と比べ、攻撃がスケールアップしたことを感じさせた。「インターハイで思うような結果が出ず、そこからチームは変わろうとした。自分も今まではゲームメイクやパスを重視していたけど、ポジションが変わったことで、得意だけど出せていなかったドリブルをするようになって、チームを活性化できていると思う」
 ボランチからシャドーストライカーへポジションを移した山下は、夏から成長した攻撃に自信を示した。 
 
 前線が注目されるチームだが、最終ラインの攻撃力も高い。特にCBで主将の石井優輝は正確なビルドアップを見せ、コンビを組む2年生の関根浩平のヘディングはセットプレーで強力な武器となる。石井は「インターハイで敗れたその日に、監督から『選手権は獲りに行くぞ』と話があった」と明かした。複数の選択肢を巧みに使いこなす七色の攻撃で、初の頂点を狙いに行く。

次ページ「選手権への意気込み!」をチームのキープレーヤーと監督に聞いた。

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