【大宮】指揮官への拍手と社長への罵声… 残留争いに敗れたチームが失ったもの

2017年11月29日 サッカーダイジェストWeb編集部

チームの迷走ぶりが表われていたホーム最終戦後の挨拶。

33節の甲府戦に引き分けた大宮は、2度目のJ2降格が決まった。(C) SOCCER DIGEST

 他の試合結果を見る必要は、なかった。大宮は33節の甲府戦をスコアレスで引き分け、2度目のJ2降格が決まった。大宮が勝って、15位の広島が勝点30に留まった場合のみJ1残留の可能性が残される状況だったが、最低条件の勝利を得られなかった。
 
 就任2試合目の石井正忠監督は、前節で仙台に大敗した原因となった守備を修正。一方、攻撃はマテウスとマルセロ・トスカーノが2トップにボールを集めるか、右サイドの岩上祐三からクロスを放り込むかに限定され、相手を崩すことはできなかった。今季チーム最多7得点の江坂任は左MFで守備をしながら2トップをフォローしたが、後半にヘディングシュートを1本放ったのみでベンチに退いた。
 
 外国籍選手頼みの攻撃は、かつて残留争いを10年続けた大宮を彷彿とさせる戦いであり、2015年の途中から指揮を執って来た渋谷洋樹、後を引き継いだが残り3試合で解任された伊藤彰といった前任監督が築こうとして来た流動性のある攻撃スタイルが水泡に帰したことを示しているかのようだった。
 
 ホーム最終戦を終えた後の挨拶に、今季のチームの迷走ぶりがよく表われていた。降格が決まったにもかかわらず、監督に拍手が送られたのだ。石井監督は、残り3試合でチームを託されたが、1戦目の敗戦で残留の可能性がほぼなくなった。試合後に「責任を感じる」と話したが、就任した時点で「責任のない(取りようがない)監督」が誕生したことは間違いない。3連勝しか残留の可能性がない状況で準備期間も短い。石井監督に多くは望めないのだ。
 
 だから、ファン・サポーターは、結果に対する気持ちではなく、火中の栗を拾った決断に感謝を示したのだろう。対照的に森正志社長が罵声を浴びたのは、人事に対する責任追及として理解できる。ただ、社長がチームをまとめたり、動かしたりするわけではない。石井監督が拍手を受けたことは、本来、責任を取るべき現場責任者の不在を意味している。
 
 クラブの来季の体制は、明らかにされていない。森社長は「石井さんと契約をするにあたって、3試合が終わるまでこの(来季に関する)話はしないようにしましょうと約束をした。今、私の気持ち、クラブの気持ちを語ってしまうと、心を決めて大宮に来てくれた石井さんとの約束を反故(ほご)にしてしまう。残り1試合を石井さんにお任せして、その後に改めて契約について話をしたい」と話したが、心を賭した者は、もちろん他にもいたはずだ。

次ページ残留争いを乗り切れなかったばかりか、継続性も失った。

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