【番記者通信】「これで終わりではない!」沈鬱な空気を一掃したヘーネスの言い得て妙|バイエルン

2014年05月08日 パトリック・シュトラッサー

終わり方でシーズンの“表情”も変わる。

捲土重来を期したヘーネス元会長の発言は、CL敗退に打ちひしがれていたクラブも鼓舞するひと言だった。 (C) Getty Images

 チャンピオンス・リーグ準決勝での手痛い敗北に打ちひしがれるバイエルンのネガティブな雰囲気を変えたのは、選手たち自身ではない。その週末のリーグ戦でハンブルクに4-1の快勝を収めたからではない。違う。その前夜に開催されたクラブ総会での、ウリ・ヘーネス元会長のひと言だった。
 
「これで終わりではない!」
 
 ヘーネスはマイクに向かってそう言うと、脱税による3年半の刑期を終えたら、カール・ホップナーに譲った会長職に返り咲きたいと希望を述べた。クラブの会員たちは、シュプレヒコールとスタンディングオベーションでヘーネスを包んだ。
 
 CEOのカール=ハインツ・ルムメニゲは、ジョゼップ・グアルディオラ監督を弁護した。グアルディオラは「非常に素晴らしい、大成功を収めた監督であり、明確な哲学とビジョンを持つうえに、素晴らしい人間」である、と。こうして、沈鬱な空気は一掃され、FCバイエルンは自信を取り戻した。
 
 ヘーネスの言葉は、まさに言い得て妙だった。ヘーネス自身にとっても、バイエルンにとっても、このひと言が必要だった。
 
「これで終わりではない!」
 
 バイエルンは5月10日の最終節、ホームでのシュツットガルト戦でマイスターシャーレを掲げ、マリエン広場の市役所のバルコニーで、伝統の"白ビールのシャワー"で栄冠を祝う。その翌週、17日はドルトムントとのDFBカップ決勝だ。この一戦に向けて、さらにムードを高めたいところだ。
 
 シーズンを締めくくるこのラストマッチは、重要な意味を持った文字通りのビッグゲームとなる。笑顔か落胆か、その終わり方で今シーズンの"表情"はガラリと変わるのだから。
 
【記者】
Patrick STRASSER|Abendzeitung
パトリック・シュトラッサー/アーベントツァイトゥング
1975年ミュンヘン生まれ。10歳の時からバイエルンのホームゲームに通っていた筋金入りで、1998年にアーベントツァイトゥングの記者になり、2003年からバイエルンの番記者を務める。2010年に上梓した『ヘーネス、ここにあり!』、2012年の『まるで違う人間のように』(シャルケの元マネジャー、ルディ・アッサウアーの自伝)がともにベストセラーに。今年5月にはバイエルンのCBダンチの自伝を出版予定。
 
【翻訳】
円賀貴子
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