【長崎】先制弾にも浮かれず、騒がず。反省しきりの乾大知は来季への戦いを始めている

2017年11月12日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「ホッとしている。そのひと言」

27分に先制ゴールを記録した乾。本人は反省ばかり口にしたが、堂々としたプレーを披露していた。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

[J2リーグ41節]長崎 3-1 讃岐/11月11日(土)/トラスタ
 
 クラブ史上初のJ1昇格を決めた試合での貴重な先制弾。右ストッパーに入った乾大知は大仕事をやってのけたが、「ホッとしている。そのひと言」と喜びを控えめに表現すると、次々と反省の弁を口にした。
 
「DFなのに最後までもたなかった(90+2分に交代)し、完封もできなかった。62分の失点シーンでは、自分がもっと相手ボールホルダーに寄せていればクロスを上げられなかったはずで、責任を感じているし、悔いも残る。
 
 J1昇格を決めた試合だけど、自分のなかでは42分の1試合という意識。もちろん嬉しい気持ちはありますけど、反省するところはしっかりと反省しないと自分の成長につながらないし、もっとプレー面を突き詰めていきたい」
 
 ただ単に「自身のパフォーマンスを振り返ってください」と訊いただけ。決して「反省点を挙げてほしい」や「失点シーンのプレーについて」などと質問したわけではない。27分の先制ゴールについて語ったのは、こちらが水を向けた時だけだった。
 
 それも神妙な表情で短い受け答え。「本当にたまたま当たっちゃった感じ」とまずは謙遜。その後も、「流れのなかで前線に上がっていたので、クロスに対して飛び込もうと思った。ファンマしか中にはいなくて、あのスペースに入っていけば事故も起きるんじゃないか、と」
 
 結局、「自分で納得できるプレーができなかった」ことが脳裏に強く焼き付いているのだ。「出ている以上はコンディションがどうとか言い訳なんてできない。良いパフォーマンスを見せられないのを仕方ないとも思わない」という言葉には、ベンチにいる選手、ベンチ外だった選手の想いも背負って戦っているという決意が滲む。
 
 チーム全体が一丸となって戦う"長崎スタイル"にどっぷりと浸かって、より熟成された考えだ。この1年、乾は自身の成長を感じ、周りに感謝しながらサッカーに打ち込んできた。
 
「高木(琢也)監督の下でサッカーをやらせてもらって選手として幅は広がったし、攻撃への意識も増した。球際も強くなったし、ハードワークできるようになった。今季はいろいろな変化があって、戸惑いもあったけど、試行錯誤しながらやってきて、良い経験になった。でも、もっともっと頑張らないといけない」
 
 クラブは2018年シーズン、J1を戦う。厳しい舞台なのは承知の上だ。だからこそ、古巣の群馬と対戦するリーグ最終戦も気を抜くことはできない。「いつも通り長崎の良さを出さなきゃ」――。17年は終わっていない。しかし、乾の新しい挑戦はすでに始まっているのだ。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)

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