【番記者通信】「常勝オーラ」は色褪せ、「暗号」は解き明かされた|バイエルン

2014年05月01日 パトリック・シュトラッサー

マドリーに「地獄」を見せるつもりが…。

CLのホームゲームで0-4の大敗はクラブ史上最悪の敗北。大会連覇、2年連続3冠を狙ったバイエルンの夢が潰えた。 (C) Getty Images

 バイエルンは0-4と崩壊した。
 
 チャンピオンズ・リーグのホームゲームでこれだけの大敗を喫したのは、48年の大会の歴史で初めてのことである。レアル・マドリーがミュンヘンで勝ったのも、これが初めてだった。
 
 バイエルンはマドリーに、アリアンツ・アレーナで「地獄」を見せるつもりでいたが、逆に自分たちが破滅してしまった。
 
 ジョゼップ・グアルディオラにとっては、とくに辛い夜となった。よりによって、"宿敵"マドリーにこの屈辱を味わわされたのだから。誇り高きカタルーニャ人であるグアルディオラにとって、マドリーはつねに仇敵なのだ。
 
 2シーズン連続での3冠の可能性は潰えた。残されたのは、2冠制覇だ。ただ、そのためには、5月17日のポカール(DFBカップ)決勝でドルトムントに勝たなければならない。現在のチーム状態は、明らかにドルトムントが上だ。
 
 そういえば、バイエルンはマイスター(優勝チーム)だった……。ベルリンでブンデスリーガ優勝を決めたのは3月25日。はるか昔の出来事のような気がする。あの時のバイエルンは、史上最速のマイスターであり、あらゆる記録を塗り替え、プレーに関しても文句のつけようがなかった。彼らは頂点にいたのだ。
 
 そこからだ、急降下するのは。バイエルンはフォームを失い、リズムを失い、安定性を失った。それはグアルディオラのせいだろうか? グアルディオラは、「リーグ戦は終わった」と宣言し、残りの試合をテストマッチとして使った。そしてマンチェスター・ユナイテッドを下して準決勝進出を決めたのだが、本来の出来からは程遠かった。フィーリングは完全に失われていた。
 
 急激に色褪せたのは、ペップの「常勝オーラ」もだ。ボールを支配するサッカーの暗号は解かれてしまったかのようだ。
 
「我々が小さな成功を楽しめなくなったら、問題だろう」
 グアルディオラはそう言った。
 
 小さな成功? たしかに。昨シーズン、ユップ・ハインケス前監督の下で3冠を達成したバイエルンにとって、ブンデスリーガ制覇は小さな成功でしかない。
 
【記者】
Patrick STRASSER|Abendzeitung
パトリック・シュトラッサー/アーベントツァイトゥング
1975年ミュンヘン生まれ。10歳の時からバイエルンのホームゲームに通っていた筋金入りで、1998年にアーベントツァイトゥングの記者になり、2003年からバイエルンの番記者を務める。2010年に上梓した『ヘーネス、ここにあり!』、2012年の『まるで違う人間のように』(シャルケの元マネジャー、ルディ・アッサウアーの自伝)がともにベストセラーに。今年5月にはバイエルンのCBダンチの自伝を出版予定。
 
【翻訳】
円賀貴子
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