【ベガルタ戦記】渡邉晋の『日晋月歩』|ピッチ内で下された判断に選手たちの成長を感じた

2017年11月01日 渡邉 晋

ゲームそのものだけでなく事前準備にも苦心した。

台風の影響もあって、事前準備には普段以上に苦心。様々な状況を想定してシミュレーションを重ねた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第30回。テーマは「悪天候」だ。今節では台風の接近によって試合開催のためのいくつかのプランを提示され、様々なシミュレーションをしたという。
 
 先にスタジアム入りしたマネージャーから「ピッチは水浸し」だという報告を受け、準備してきた対G大阪対策の放棄を一時は決めたが……。ゲーム開始前から頭を悩まされた一戦を振り返ってもらった。
 
 
――◆――◆――
 
[J1リーグ31節]G大阪 1-1 仙台/10月29日(日)/吹田S
 
 今節は台風の影響もあって、ゲームそのものだけでなく事前準備にも苦心した。前日にマネージャーと強化部から、試合開催に対してのいくつかのパターンが提示された。
 
 まずひとつは、通常通りにキックオフをする。もうひとつは時間を遅らせる。次に翌日の月曜日に行なう。それだけではなく、ルヴァンカップ決勝戦の前日、11月3日に試合をする案も出ていた。
 
 その一つひとつに対して、どう対処するかのシミュレーションをした。キックオフ時間が大幅に後ろ倒しとなるならば、合わせて試合食の時間をズラさなければならない。もし月曜日開催ならば、もう1泊することになるが、身体を動かす場所は確保できるのか。
 
 11月3日になるならば、1日オフを作って、再びコンディションを整え直さなければならない。決断は当日の朝10時、ガンバ側もリリースを出すという話だったので、それまでにできる限りの用意をして、その決断を受け入れようと考えていた。
 
 予定通り、16時キックオフとなった。スケジュールは変わらないが、ピッチ状態によってはキックオフ時間が少し遅れる可能性も残っていた。そのため、先にスタジアム入りしているマネージャーに「ピッチを確認してほしい」と連絡をしておいた。
 
 すると、「どの箇所に水が溜まっているとかではなく、水浸しです」と。ボールが転がる状況でないのはそれだけで想像できたし、しかも雨は降り続いている。市立吹田サッカースタジアムは水捌けが抜群というわけではないので、「ゲームプランを変えないといけない」と考えた。
 
 試合前のミーティングでは準備してきたG大阪対策をサラッと流して、その後に「今日はボールが走らない。それならば、相手ゴールに向かうことだけを考えよう」と話した。細かい部分はゲーム前までにもう一度整理して指示するつもりだった。

次ページピッチ内の判断で戦い方を変更してくれた。

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