【現地発】U-17W杯も制覇のイングランド。育成改革の次なるステップは?

2017年10月31日 山中忍

抜本的な育成改革の恩恵を受けた“ヤング・ライオンズ”。

インドで凱歌を上げたU-17イングランド代表。その実力をいかんなく発揮したエリート集団はいかにして世界王者となったのか? (C) Getty Images

 10月28日にインドで開催されたU-17ワールドカップ決勝で、イングランドがスペインを退けて世界王者となった。翌朝、英国のタブロイド紙の1面には、首から光り輝く優勝メダルを下げて喜ぶ"ヤング・ライオンズ"の写真が堂々と飾られた。
 
 一般紙のスポーツ1面も同様で、日曜版代表格といえる『サンデー・タイムズ』紙では、プレミアリーグ10節のビッグマッチであるマンチェスター・ユナイテッド対トッテナム(〇1-0)の結果を抑え、イングランドが5-2と逆転勝ちを収めたことが最初の見開き2ページで大々的に伝えられた
 
 ここ数年、イングランドのユース世代は目覚ましい発展を遂げている。今夏にはU-20ワールドカップとU-19欧州選手権でも優勝を果たし、英国内では「黄金の夏」と評された。
 
 その育成年代の発展の中でも、今回のU-17代表の優勝は最も重要視されていると言っていい。というのも、「セント・ジョージズ・パーク世代」が掴んだ偉業という理解があるからだ。
 
 1966年に母国でワールドカップを制覇したのを最後に「王者」の呼称に縁のないイングランドA代表の復興に向けて、FA(イングランド・サッカー協会)を先頭に抜本的な育成改革が始まったのは2012年頃。その象徴であり、サッカー少年たちの教育の場でもある「セント・ジョージズ・パーク」(イングランド中部にあるFA所有のトレーニングセンター)が新設された当時、現U-17代表選手たちはアカデミーの入り口である小学校低学年だった。
 
 そんな彼らが小学校高学年になる頃には、プレミアリーグの下部組織で、ホームグロウンプレーヤーの増加などを目論んだ「EPPP(エリート選手養成プログラム)」が導入され、彼らはそのプログラムの恩恵を受けた。
 
 確かな技術と攻め勝つ意識に裏打ちされたサッカーで、2点のビハインドからスペインに勝利した彼らは、育成改革が実を結んでいることを示す正真正銘の成功例――。その認識が英国内では強いのだ。
 
 それゆえに報道のトーンも、今年6月に韓国で世界王者となったU-20代表のそれとは違っている。
 
 紙面などで大々的に扱われてはいるが、不必要なプレッシャーを与え、過信をも招きかねないと、「新・黄金世代」という表現を避ける傾向も窺え、さらに若手に出番が回ってこないプレミアリーグの現状に関しても、「ベンチに座るだけ」という"愁嘆"ではなく、「ただ座っていてはいけない」という"勧告"へと変わっている。

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