【番記者通信】2冠へ虎視眈々――“舌好調”モウリーニョの不敵な笑み|チェルシー

2014年04月29日 ダン・レビーン

切れ味鋭いカウンターを炸裂させて2ゴール。

饒舌で不敵なモウリーニョは、2冠への手応えを感じているはずだ。 (C) Getty Images

「ジェイミー・レットナップに聞いてくれ。彼ならすべて知っている。レッドナップは最高のフットボールの頭脳を持っている。なんでも説明してくれる」
 
 策士ぶりを発揮して首位リバプールを2-0で下したジョゼ・モウリーニョ監督は、『Sky Sport』のインタビューに応え、皮肉たっぷりに語った。
 
 これには伏線がある。前節のサンダーランド戦に敗れたモウリーニョは、決勝点となるPKを相手に与えたマイク・ディーン主審に痛烈な言葉を送った。
 
「素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた審判を祝福したい」
 
 モウリーニョのこの発言に対し、『Sky Sport』で解説を務めるレッドナップは、「潔くない」とコメントしていたのだ。
 
 普段は饒舌なモウリーニョが、リバプールとの大一番を2日後に控えた記者会見では口数が少なかった。
 
「本当のことがなにも言えない。自由がないように感じるし、なにも話せない。私が口を開くたびに、結果的に問題となる。『審判が素晴らしかった』とコメントしても、懲罰を受ける。ちゃんとした記者会見がお望みなら、FA(イングランド・サッカー協会)と話してくれ」
 
 ディーン主審に対する発言が罰則の対象となったこと、さらに、アトレティコ・マドリーと戦うチャンピオンズ・リーグ準決勝(第2レグ)を考慮してリバプール戦を土曜開催にしてくれなかったことに、モウリーニョはイライラを募らせていたのだ。
 
 こうして迎えたリバプール戦(4月27日)。主力を温存しながらも、モウリーニョは鮮やかに勝利を演出してみせた。
 
 隙のない鉄壁の守備で、注文通りスコアレスドローに持ち込んだアトレティコ戦の第1レグとは異なり、リバプール戦は守るだけでなく、切れ味鋭いカウンターを炸裂させて2ゴールを奪取した。
 
「ゴール前にバスを2台置いていた」と語った敵将ブレンダン・ロジャースの精一杯の皮肉も、モウリーニョには心地よく響いたはずだ。過去にモウリーニョは、対戦相手の守備的な戦い方を「ゴール前にバスを止めていた」と表現している。ロジャースはそのコメントを引用して、さらにバスを1台追加したのだった。ちなみにロジャースは、第一次モウリーニョ政権下でユースのコーチを務めている。
 
 試合後、饒舌なモウリーニョが帰ってきた。
 
「我々にはノーチャンスだ」と優勝の可能性を改めて否定しながら、この勝利を「ベストのチームが勝った」結果だと振り返り、「(リバプールとマンチェスター・シティのどちらが優勝しても)チャンピオン相手に2勝したことになるな」と不敵に笑った。今シーズンのチェルシーは、リバプールとシティに「ダブル」(2戦2勝)を食らわせている。
 
"舌好調"なモウリーニョほど、確信に満ち、相手にとって恐ろしいものはない。
 
【記者】
Dan LEVENE|Fulham Chronicle
ダン・レビーン/フルアム・クロニクル
チェルシーのお膝元、ロンドン・フルアム地区で編集・発行されている正真正銘の地元紙『フルアム・クロニクル』のチェルシー番。親子三代に渡る熱狂的なチェルシーファンという筋金入りで、厳しさのなかにも愛ある筆致が好評だ。
 
【翻訳】
松澤浩三
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