【広島】林卓人の復帰戦。仲間であり、ライバルであるGK陣に表した感謝と敬意

2017年10月30日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「ウッズとヒロがピッチで戦ううえでの気持ちを作ってくれた」

復帰戦でR・シルバとの1対1を止めるなど、期待通りのパフォーマンスを披露。ただ勝利は遠かった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ31節]広島 0-1 浦和/10月29日(日)/Eスタ
 
 広島の背番号1、林卓人がピッチに戻ってきた。実戦復帰は6月25日に行なわれたJ1リーグ16節・大宮戦(0-3)以来、実に15試合ぶり。久々のゲームに試合勘の欠如も心配されたが、さすがのパフォーマンスを披露したと言っていいはずだ。
 
 飛び出し、キャッチング、フィード、状況判断……。大きなミスが散見されなかったどころか、50分には最終ライン裏に抜け出したラファエル・シルバとの1対1で冷静にシュートコースを読み切り、しっかりとボールを弾き出した。
 
「これまでシモさん(下田崇GKコーチ)も練習に付き合ってくれましたし、ゲーム感覚という部分ではスムーズに試合に入れたと思う。今日は完璧ではありませんが、いいものを作り上げようとしているなかでスムーズにプレーできたのは自信になった。
 
 もちろん悠長なことを言っていられないチーム状況だと理解しています。それでも、自分が新しく取り組んでいることが間違いじゃなかったと、今日の浦和戦で確認できたので良かった」
 
 8月15日に広島県内の病院で 腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けた。下された診断は、全治8週間。苦境に喘ぐチームの力となれない、もどかしい時期を過ごした。そんななかで自身の穴を埋めてくれたのが中林洋次であり、廣永遼太郎だった。
 
 だからこそ、「GKという立場にしっかりとスポットライトを当ててほしい」という言葉につながったのだろう。同ポジションで切磋琢磨するライバルたちへの想いが溢れてくる。
 
「この試合に臨むに当たって、不安だったり、期待だったり、いろんな感情が入り混じっていた。それで最後に『やってやろう!』という気持ちにさせてくれたのはサポーターへの声援だと思う。
 
 あと、ウッズ(中林)は本当に悔しかったと思うし、ヒロ(廣永)だってずっと第2GKとして準備をしてきたのに、自分はそれを飛び越えてピッチに立った。でもふたりはプロフェッショナルとして素晴らしい態度、行動を示してくれた。それが僕を奮い立たせてくれた。ピッチで戦ううえでの気持ちを作ってくれたのは、ふたりだった。そんな姿勢に敬意を表したい。だからこそ、そういう想いに結果で応えられなかったのは非常に残念に感じている。
 
 次の試合に誰が出場するかは分からないけど、どういう立場になろうが、彼らに対して感じたことを自分も与えたいと思うし、『GK陣はグループとして進んで行く』ということを態度で示したい」
 
 実はミックスゾーンで林は「久々の先発だったが、パフォーマンスはどうだった?」という質問を訊かれている。それに対して「僕自身の前に」と真っ先に仲間への気持ちを話したのだ。林という選手の、GKとしての矜持を垣間見た気がした。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)

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