【川崎】決勝のピッチに立てずとも…奈良竜樹はなぜあの“退場”を前向きに捉えられるのか

2017年10月28日 高木聖佳

「フロンターレへの周りの声、目を変えたい」

ルヴァンカップ準決勝での退場劇を経て、その後のリーグ戦における奈良は奮迅の働きを見せている。その心中やいかに!? 写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 ピッチリポーターとして取材をしていると、選手の言葉に、つい自分自身を振り返って考えさせられることがある。サッカー選手はひとの何倍もの速度で、いろんな喜怒哀楽を経験しているのだと思う。若い選手から学ばされることも本当に多い。
 
 最近だと、川崎フロンターレの24歳、奈良竜樹選手だ。先日、彼はこんな言葉を口にした。
 
「チームが勝ったから言えるんですけど」と前置きしたうえで、「自分は、退場になったこともいまではよかったと思ってるんです。一時期試合に出られなくて最近は出してもらっているなかで、もしかするとどこかプレーが怠慢になっていたところがあったのかもしれない。もう一度気を引き締めろって、そんなに上手く行かないぞって、なにかが教えてくれたのかなと」
 
 ルヴァンカップ準決勝2ndレグ、ベガルタ仙台戦で彼は退場処分を受けた。リードはしていたものの、失点をすれば一気に形勢が逆転する。フロンターレの勝ち上がりが怪しくなったその状況下で、わたしが最初に思ったのは、「奈良選手は決勝に出られないのか」……だった。
 
「フロンターレへの周りの声、目を変えたい」
 
 以前、タイトルへの想いを尋ねた時、奈良選手はこう答えてくれた。
 
「フロンターレは大事な試合で勝てないと言われることが本当に悔しい。例えばビッグゲームをモノにした次の試合を落としたら『やっぱりフロンターレだ』って。でもそれはフロンターレがタイトルを獲っていないから。優勝することで、フロンターレは勝利にこだわる集団なんだと証明したい。フロンターレの強さ、価値を証明したいんです。僕はフロンターレがJで一番のクラブだと思ってます。そのクラブにタイトルを獲らせたい」
 
 移籍加入してまだ2年目の選手とは思えない熱量で、フロンターレについて語る奈良選手。その姿に、少し驚かされた。

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