大金をかけても低迷中のミランについて、かつての関係者らが語る共通のこと

2017年10月24日 サッカーダイジェストWeb編集部

現場介入で有名だった前オーナーも…

リーグ8節での4敗目は史上3番目の早さ。低迷の原因として、ボヌッチも槍玉に上がっているひとりだが、ミランの問題は一選手によってどうこうできるものではないだろう。ここからのフロントの姿勢に注目が集める。 (C) Getty Images

 セリエA第9節でジェノア相手にスコアレスドローに終わり、4勝1分け4敗で11位に沈んでいるミラン。ヨーロッパリーグを含めると、ここ4試合勝ちなし(2分け2敗)と調子を落としている。

 今夏、約2億ユーロ(約260億円)を投資して、イタリア代表の守備の要のひとりであるレオナルド・ボヌッチら10人の即戦力を獲得したチームには大いに期待が寄せられていただけに、現在の不甲斐ない状況にファンは大いに失望し、また厳しい声を投げかけている。
 
 ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督の去就問題やフロント陣らの責任問題も取り沙汰されている現在のミランについて、1990年代に4つのスクデットをこのクラブにもたらした他、94年には欧州優勝にも導いた名将ファビオ・カペッロは、以下のように語っている。
 
「チームを改革する場合には、クラブは監督(コーチ陣)に時間を与える必要がある。そして、多くの選手を一気に買うよりは、違いをもたらすことができる3人の重要な選手を獲得する方が望ましい」(『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙より)
 
 このコメントは、先日、久しぶりにミランについて前オーナーのシルビオ・ベルルスコーニが言及したことと、ほぼ同じである。かつての名物オーナーは新フロントの補強について、「2億ユーロもあるなら、本当のトッププレーヤーが獲れたはずだし、そちらの方が効果的だ」と批判していた。
 
 モンテッラ監督批判などの持論も展開したことで、口さがない前オーナーの「要らぬ横やり」という捉えられ方をしてしまったこれらの発言だが、内容に関しては多くの賛同を得ているのは事実である。
 
 ちなみに1987年夏にベルルスコーニ会長(当時)が改革に着手した際には、違いをもたらす存在として、オランダからスター候補のルート・フリット、マルコ・ファン・バステンを、そしてローマから経験豊富な中盤のコンダクターとしてカルロ・アンチェロッティと、バランスの良い補強を行なった(当時は外国枠が2人ということもあったが)。
 
 また今シーズン、6節のサンプドリア戦でリーグ2敗目を喫した際、マルコ・ファッソーネCEOがメディアを通して現場を批判。さらにマッシミリアーノ・ミラベッリSDとともに直接、監督や選手を叱責し、直後にモンテッラ監督が気心の知れたスタッフのひとりを解任する事態となったが、この件については、フロントの過剰な圧力として批判の声も多く上がっている。
 
 一方、ベルルスコーニ政権での改革1年目を振り返ると、新監督アリーゴ・サッキが提唱する革新的なゾーンプレスが序盤はなかなか機能せず、ミランはリーグ7節終了時点で3勝3分け1敗、そして直後のUEFAカップではエスパニョールに敗れて2回戦で早くも敗退してしまった。
 
 この頃にはサッキ解任の噂も上がっていたが、ベルルスコーニ会長(当時)はエスパニョール戦後、監督室に赴き、わざと選手に聞こえるほどの大きな声で「アリーゴ、よくやったぞ! 君はとても勇敢だった。今後もその調子で頼む。いずれ我々が正しいことが証明されるはずだから」と労い、現場に安心感を与えたというエピソードがある。
 
 自ら惚れ込んでサッキを招聘したというもあり、現場に落ち着いてプレーに集中できる環境を与えたことが、選手やチームのポテンシャルを引き出すこと、引いてはこのシーズンからの黄金時代の幕開けに繋がったことは間違いない。
 
 負債を抱えるがゆえに今シーズン、チャンピオンズ・リーグ出場権を得なければならないというプレッシャーがフロントを焦らせているともいわれており、80年代とは状況がまるで違うと言ってしまえばそれまでだが、多くの選手を入れ替えたチームが結果を出すのに時間が必要なのは、過去の例を出すまでもなく明白である。
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