ゴール量産で好循環を生む――A・サンチェス|バルセロナ

2014年02月20日 下村正幸

求められるのは、崩しでのさらなる貢献。

25節終了現在で15ゴールは、14ゴールのメッシを抑えてチーム得点王。ゴールという目に見える結果で、ファンの信頼もつかむ。 (C) Getty Images

 昨年10月のクラシコでの2点目のように、難易度の高い、芸術的なゴールを決めたかと思えば、なんでもないシュートを外したりする。それでもアレクシス・サンチェスは、今シーズンここまで15ゴールをマーク。リオネル・メッシを抑えて、チーム得点王だ。

 技巧派揃いのバルセロナでは、ボールテクニックの拙さが目につく。タイトな局面での判断の遅れも気になるところだ。そのため、サンチェスが入るとパス回しが遅くなる。バルサに入団する新戦力は、ほぼ例外なく順応に苦労するが、セリエAでカウンター主体の縦に速いサッカーに馴染んでいたサンチェスは、なおさら適応に苦しんだ。ボールを受けてもポゼッションを優先し、得意なはずの1対1のドリブル突破を仕掛けずに、セフティーなパスに逃げる。

 前線からの激しいチェイシング、体幹の強さを活かしたポストプレー、バックラインの裏を取るフリーランニングといった持ち味を、発揮していないわけではなかった。しかし、首脳陣やチームメイトが貢献を評価する一方で、目に見えにくいそうしたプレーはファンには届かず、手厳しい外野の声となってサンチェスに跳ね返っていた。

 それが一変したのは、ゴールという目に見える結果が出たからだ。量産は、もちろん偶然ではない。ショートパスを丹念に繋ぐポゼッションにそこまで拘泥せず、チャンスとあれば積極的にオープンスペースを突く新指揮官の志向が、サンチェスに追い風を吹かせたのだ。ヘラルド・マルティーノの就任は、その意味で大きかった。ゴールという結果が自信につながり、自信がさらにゴールを呼ぶ。そんな好循環が生まれた。

 もっとも、前述のようにイージーゴールを外すミスがあり、完全に信頼を勝ち取ったとも言えないのが現状だ。約30億円という高額の移籍金が、足枷にもなっている。金額に伴う期待と要求の大きさが、依然としてサンチェスにはのしかかっている。入団3年目の今もだ。

 コンスタントに得点を積み重ねているとはいえ、サンチェスはストライカーではない。熾烈なレギュラー争いを制するには、仕掛け/崩しの局面でのさらなる貢献が不可欠だ。得意のドリブルで局面を打開し、もっともっと“違い”を作り出す必要があるだろう。かといって、無謀な仕掛けはもちろん禁物だ。繰り出すタイミングと、状況判断を研ぎ澄ませる進化が、自身にとって、ひいてはチームにとっての利益となる。
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